雪国冒険奇譚

ヤリーロ-VIの書籍セット、Honkai: Star Rail原文をそのまま5言語で無料公開、全9冊収録。

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最終更新: 2026年7月31日

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雪国冒険奇譚

第二章 氷雪の都 第三節

前回のあらすじ:アルチョムは応接室で女王の呼び出しを待っている時に、話を持ちかけてきたダミルと出会い、会話をする。ダミルは自分の本当の目的は、共に溶岩の国に戻り、共に空を飛ぶ仲間を探すことだと告げ…… アルチョムの思考は、スティックで叩かれたドラムの表面のように——またしても動揺した。 「大地を離れ……天外に行くのか?」 未知のテクノロジー、未知の歴史、遠く離れた神秘の国——次々と押し寄せてくる事実が、アルチョムの常識に衝撃を与える。もう驚くまいと思っていた時、目の前の男に誘われた。火山の力を使って大地を離れようと。彼に残された選択肢は1つ—— 「すまないが、それは無理だ!」 「チャレンジ精神のあるお前なら、すぐに頷くと思ったんだが」 「それとこれとは別だろ。遠い異国に行くことや、高い場所に登ることは、傍目には狂っているように見えても、人間の理性と冒険心の範囲内だ。火山の力を使って空に飛び立つなんて…ずいぶん変わった自殺だな?」 何度か言葉を交わした後、彼は火山から来た冒険者に別れを告げた。 「それは無謀な行いではないかもしれませんよ」少し進むと、威厳のある、しかし心地の良い声で、誰かが話しかけてきた。 その時、アルチョムは少し離れた場所で豪華な服装の女性が立ち止まって自分を見つめているのに気がついた。その人の服装から、アルチョムは何かに気づいた——彼は慌ててお辞儀をすると、女性は笑顔で頷いた。 「一つ質問をいいかしら?ベロブルグから来た冒険者よ——あなたはなぜ生死すら分からないこの旅に出たの?」 「もしかしたら……僕の体の中に道を求める血が流れているからかもしれません?」アルチョムは考えながら答えた。しかし、次の瞬間彼は頭を横に振った。 「あるいは、ベロブルグでの生活があまりにも平和だからかもしれません。私たちは温室に隠れて、毎日演説家の講演を聞くだけ。兵士たちは国境を守り、怪物が都市に足を踏み入れることも、人々が国境を越えて一歩踏み出すことも許されませんでした。仕事を真面目にこなせば衣食住に困らないのは事実です。ただ、あそこの毎日は変わりなく平和で、新しい変化がありません。ベロブルグに住む人々は、不安定な未来や慣れ親しんだ生活の喪失を恐れているのです。ベロブルグの数百年の歴史の中で、本当の意味であそこを離れた人はいませんでした」 「僕は、毎日ほとんど同じ内容の新聞をもう見たくないのです。目を覆い、耳を塞いで、ベロブルグが世界の全てだとは思いたくありませんでした。平和で静かな生活から離れても生きていけるかどうかを知りたかったんです」 女性は笑った。「どうやらあなたは生まれる場所を間違えたようね。あなたは私が知っているベロブルグの人たちとは全く違うわ」 「僕以外にも、他のベロブルグの住民がここに来たことがあるのですか?」 「あれは百年前のことで、残念な結末のお話よ。幸いなことに、氷雪の都は一箇所に留まらず、雪や風の中を移動し続けているので、争いによってお互いが滅ぶのを避けることができたわ」 アルチョムは、女性の口から発せられる言葉に衝撃を受けながら耳を傾けていた。「つまり、ベロブルグと氷雪の都は昔、戦争になりかけたということですか?」 女性は手を上げて、質問をやめるように合図した。「それ以来、氷雪の都はベロブルグからの訪問者には警戒しているわ。でも、ご覧の通り、氷雪の都は動かない氷の塊ではなく、流れる水のように型にはまらずに作られているの」 「誰かを判断するということは、宝石を様々な角度から鑑賞することに似ている。私はアンナからあなたのことを聞いて、あなたが書いた冒険日記も読んで、今実際に会っている。氷雪の都の基準では、あなたは確かに優秀な人のようね」 「女王陛下、寛大なご判断をありがとうございます」アルチョムは深くお辞儀をした。 「話を戻しましょう。あなたがなぜ冒険に出たのかを知りたいわ。あなたの答えは、あなたが狭い範囲にとらわれたくない、同じことの繰り返しで毎日を過ごしたくない、という気持ちを証明した。氷雪の都、溶岩の王国……あなたは既にこの世界の多くの光景を目の当たりにし、その話を聞いた。それは普通の人が夢に見る内容よりも遥かに多いわ。でも、天空にとっての大地は、世界にとってのベロブルグのよう——あなたなら、私が言いたいことを理解できるでしょ?」 「僕は……わかります、陛下。しかし、僕は人が天空に足を踏み入れることができるとは思えないのですが?」アルチョムは小声で答えた。「そんなことができるのは鳥だけだと思います。僕、僕は、ダミルの誘いが、破滅への歩みなのか、それとも冒険での大きな賭けなのか判断できません」 「その二つに……明確な違いはあるのかしら?生存は人間の本能、冒険には遥か昔からリスクが付きものよ。旧世界は私たちが想像もできない高みに達していた。厳密に言えば、冒険や探検も旧世界の遺産の一部よ」 「ベロブルグで平和に暮らしていたあなたには、氷雪の都の様子は想像もつかないでしょう?ダミルの言った『天外の境』もでたらめではないわ。それは、旧世界の人類が肉眼では見えない遠い宇宙に残した奇跡よ。ただ、その存在を現代の人はとっくに忘れてしまっているの」女王はため息をつき、残念そうにした。 「あなたが古代の遺物を追って雪原まで行ったのは、旧世界の遺産を引き継ぐためでしょう。帰り道は雪に埋もれて、もう存在しないわ、アルチョム。前に進むしかない、あなたも、氷雪の都も、ずっとそうだったわ」 「考えさせてください」冒険家は考え込みながら、深いため息をついた。「ダミルと話し合おうと思います」 女王は急に真剣な表情になった。「私はあなたを説得しようとしているわけではないわ、若きアルチョム。冒険は衝動的にできるけれど、衝動だけで世界の果てまで行ける人はいない。あなたがどういう選択をしても、私はあなたに贈り物をするわ」 女王はマントから手を伸ばし、腕ほどの長さの短い杖をアルチョムに差し出した。短い杖の片方は二つに枝分かれしており、双頭の鷲の形をしているのが特徴的だった。 「若きアルチョム、氷雪の都に跪くという礼儀作法はない。でも、昔の人の知恵に敬意を表して、片膝をついてみるのもいいかもしれないわ。私にではなく、旧世界に」 女王が杖を握ると、突然、液体が流れ剣の形に変わり始め、冷たい蒼い刃になった。 彼女は驚くべき速さで刃を回転させ、剣先で軽く、アルチョムの左右の肩と頭頂部に一度ずつ触れた。 「あなたの前途に障害が無いように。あなたが常に幸運に恵まれるように。あなたの勇気が衰えぬように」 「この水でできた剣は旧世界から伝わった技術よ。氷の都の騎士、あなたに贈りましょう。天空にとってこれは些細な針に過ぎない。大地にとっては、障害を切り開くための道具でしかない。しかし、あなたにとっては、危機の中で前に進む勇気になる」 「行きなさい、アルチョム」

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