フォンテーヌ廷地区
地域
世界百科
「あらゆる水の頂点に立つのは、この都だけ」街の中にはフォンテーヌの最も尊き権威を表す「パレ・メルモニア」がそびえ立つ。この建物に俯瞰される中、人々は「巡水船」の運航時刻のように、秩序ある暮らしをしている。法律は秩序を維持するために存在し、公平と正義は秩序によって築かれた礎石の上に立つ。
ステータス
名称: フォンテーヌ廷地区 · 種別: エリア · 国: フォンテーヌ · 実装バージョン: 4.0
サブエリア
1. フォンテーヌ廷1.1. フォンテーヌ廷1.1.1. 概要フォンテーヌ廷はで一番重要で壮麗なる都市で、の邸宅がある。フォンテーヌ廷へは、ロマリタイムハーバーから、「巡水船」クレメンタイン線に乗ることで辿り着くことができる。フォンテーヌの特徴の「審判」のイメージから、この国が生真面目で厳かな場所だと思う者も多いが、フォンテーヌ廷は芸術と美食の都市でもある。貴重な建築物や音楽、絵画に食べ物の聖地で、どれもじっくり堪能するべきものばかりだ。1.1.2. 薔薇と銃士という祭りは、ここフォンテーヌ廷で行われる。はを探し、水神を迎えたという伝説のを記念して設けられた祭日。モンドのや、璃月のなどの他の有名な祭りと同様に、フォンテーヌの建国、そしてこの地特有の「法律」と「審判」と密接な関係にあり、フォンテーヌで最も重要な祭日の一つでもある。もともと、人々は純水騎士を称えるため、格好を真似た特別な衣装を着て金杯を手に持ち、家々をまわって純水を求める祭りであった。しかし、ここ数年でフリーナはそれではつまらないと考え「純水を求める」から「お菓子をねだる」祭りに変えた。毎年、祭りが開催されている数日間は、家々を訪ねて「トライアル・オア・トリート!」と言いながら大喜びしている様子が伺える。旅人が参加した初めての千霊祭では、祭りの最後に元水神フリーナの名を冠した栄誉ある「フリーナ賞」が授与された。フリーナはもはや水神ではないものの、フリーナがフォンテーヌの大スターとして舞台上で輝く姿は誰の目にもはっきりと映っており、賞の名にふさわしいと考えられた。1.1.3. 画像認識実験レポートある日、「画像認識学」のエンジニアのレピーヌ・ポーリーンは、詐欺を働く悪党をテイワットから完全に駆逐することを目的として、研究を行っていた。彼女は『スチームバード新聞』で、「入念な観察で警備ロボの弱点に気づいた複数の犯罪者が、プクプク獣に変装し、窃盗を働いた…」「彼らを空気扱いした警備ロボは、その犯罪行為を阻止することは一切なかった。」という記事を目にした。彼女は、犯罪者の偽装を見抜くために、一刻も早く力を発揮しようと考えた。レピーヌ・ポーリーンは、大量のサンプルから、簡潔かつ高い効率と正確性を両立させた画像認識のロジックを導き出し、ロジックをプログラムした小型補助装置を製作しようとした。これを、クロックワーク・マシナリーに組み込めば、偽装を見破り、犯罪行為を正確に判断できる能力が備わるようになるという。彼女は、これをとてつもないビジネスチャンスだと信じ、貯金を使い果たして、銀行から大金を借りた。しかし、後になってその記事は、誰かが趣味で創作して、匿名で投稿した報道記事風の物語だと判明した。編集者たちも、小説が民衆に誤解を与えることを懸念して、執律庭に問い合わせをしたが、執律庭はむしろ掲載を支持した。偽情報が潜在的犯罪者の耳に入れば、目立つ被り物での犯行を誘導できるかもしれないと考えたためだ。実際に、小説が掲載されてからというもの、数多くの「プクプク獣怪盗」、「巨大赤カンムリガラ」に「フライムマン」たちが執律庭によって逮捕された。傷ついたレピーヌ・ポーリーンは、近くの警備ロボと一戦を交えて、メロピデ要塞に送られることで借金返済を逃れようとした。茫然自失となる彼女を見かねたは、この技術を別の用途を提案した。「画像認識サンプル収集撮影レンズ」は、より正確に収集し分析するための特別設計がなされている。加えて素早くフォーカスを変えられるこのレンズは、きっと記者たちの役に立ち、フォンテーヌ新聞業界の進化を推し進める力になるかもしれないと伝えた。この話を聞いて、レピーヌ・ポーリーンはすぐに億万長者になる夢を取り戻し、レンズの大量生産の案を実行するため、旅人やシャルロットを置き去りにして足早に去っていった。ええ…もし知り合いの伝手で、画像認識の設備を必要としてる工房に売ることができたら、もう少しモラを集めることができるわ…ああ、もっと早く考え付けばよかった!善は急げ!一刻も早く!また、この一件で、シャルロットも新聞記事の以下の特ダネを得たようだ。「特殊なニーズがあったからとはいえ、新聞報道と文学作品の境界線はできるだけ線引きさせたほうがいい。」1.1.4. ちびチエキノコン大合戦「ちびチエキノコン大合戦」というゲームは、テイマーのと、娯楽小説の作家が主催し、フォンテーヌ廷で開催された。ハニヤーは、キノコン公式大会の信頼できる出資者を探すためにフォンテーヌを訪れた。そのためにまず、キノコンの可愛さを宣伝するウォーミングアップイベントで観客を集めようと考えた。また、叡智宝珠を改良するため、この分野に詳しい技術者を探すことも目的としていた。のフォンタプロジェクトチームが、多額の資金援助をして、適切な人材を見つける手助けもしてくれると約束した。左右加はウォーミングアップイベントの計画を準備し、ハニヤーのためにフォンテーヌのエレガントな衣装を用意して、立ち振る舞いの特訓を行った。前回の「チエキノコン布陣」の遊び方は、「ちびチエキノコンたちを指揮してフィールド内の布陣機関を破壊する」というものだったが、長く遊ぶに魅力が足りなかったのか、すぐに人気が落ち込んだ。しかし、左右加が色々な文献や小説の描写を結集させて、布陣機関の代わりに強力な相手を模した駒を取り入れ、ゲームに様々な変化をもたらした。左右加は、『スチームバード新聞』とゲームの宣伝広告の掲載についても話し合った。「特巡隊」新入りのトゥレーヌは、外来生物を監視し、特別な客人のために最高クラスの手助けをして、一般警察隊員の手に負えない問題を解決するため、ハニヤーに付き添った。トゥレーヌは、旅人とパイモンの仲間であるのために、面倒を見てくれる「友達」を手配した。その友達は優雅な雰囲気を漂わせている警備ロボで、パイモンは「礼儀正しい礼帽さん」というあだ名を付けた。1.1.5. 受注可能な世界任務このサブエリアでは、以下の世界任務が発生する。赤と黒ルロワ~三途の川を引き返す~彼の命はそこにある水色の潮痕フォンテーヌからのメッセージ半オート鍛造一通の知らせ些細な出来事とある印章一面の廃墟に留まる科学院早々に頓挫!「画像認識学」…関連項目:1.2. 廷地区アクアロード・ターミナル1.2.1. 概要廷地区アクアロード・ターミナルはフォンテーヌ廷の中央に位置する。ここは巡水船の駅となっており、このポートを通る航行路線は全部で三つある。ロマリタイムハーバーに繋がるクレメンタイン線、エリニュス島に繋がるナヴィア線、方面に繋がるカーレス線だ。しかし、カーレス線は事故で運行停止となっている。の会長はカーレス線の再建を検討中である。ターミナルの一階はセントラルポートホールで、水路インフォメーションスタッフが居る。二階がクレメンタイン線、三階がナヴィア線、四階はパレ・メルモニアと直結している。1.2.2. 七聖召喚一階のセントラルポートホールには、二人の協会認定プレイヤーが居る。のエージェントので、周囲の人間に興味を持っている。ラミアは最近、一部の通行人と七聖召喚をプレイし、楽しみながら会話をするようになった。彼女が対戦で見せる実力は、実に尊敬に値するものだと言われている。水路検修員。水路修理の仕事を終わらせた後、自由な時間を使って、七聖召喚の優れたカード技術を身に付けた。1.3. ヴァザーリ回廊1.3.1. 概要ヴァザーリ回廊の中央の広場には、大きな動く噴水があり、廷地区アクアロード・ターミナルへの入り口がある。ヴァザーリ回廊は、この噴水の広場の階層を中心に広がる円形のサブエリアである。ここには多くの商店が店を構えている。1.3.2. ボーモント工房のボーモント工房はフォンテーヌ廷で最も有名な金属鍛造工房だ。ここでは自慢のオートスミスを使って頼もしい装備を作ることができる。フルオーダーメイドも可能で、手付金、必要書類、関連証明書類を持参してエスタブレと相談することになる。ここで使用している自動鍛造装置はエネルギーによって稼働している。このエネルギーは、法廷で審判が行われる時、「カーディナル」が人々の正義に対する信仰を集め、それをエネルギーに転換したものだ。律償混合エネルギーは信仰から生まれる力をエネルギーに変えたものだが、「プネウムシア」は生産過程で神に頼らないエネルギーだ。ただし、この力は不安定なエネルギーで、未だに広い範囲での実用化には至っていない。の予言が実現するより前、エスタブレはのためにの作成に手を貸していた。旅人は、フレミネたちの頼みで、マジックポケットの材料をエスタブレに届けて雑談していると、カブリエール商会のトルヨンがエスタブレの借金を取り立てに来た。そこにが現れ、北国銀行として、カブリエール商会の借金を取り立てようとした。タルタリヤは、旅人が居ることに気づくと、旧友との奇遇な再会を喜んだ。1.3.3. カフェ・リュテスは元共律官で、現在はカフェ・リュテスの店長だ。共律官だった頃は、彼の考え方はオフィスでは過激だと考えられていた。元同僚のシャトレによれば、彼のコーヒーの腕は非のうちどころがなく、仕事をやめてカフェを開いたのは、彼の人生の中で一番正しい選択の一つとのことだ。カフェ・リュテスは、今やヴァザーリ回廊で最も人気のあるカフェとなった。美味しいコーヒーと茶菓子は人々から好評を得ており、様々な分野から来た客がコーヒーを飲みながら自由に雑談し、哲学的な話題を話し合っている。誰でも参加でき、どんな話題も禁じられていない一一「死」という話題を除いて。1.3.4. エミリエの香水ヴァザーリ回廊に立ち並ぶある店で、店員のカルカーニはの香水について言及している。エミリエの行方はまさに香水そのもので、触れることはできず、引き留めることもできない。彼女はどんなブランドとも常時提携を結んでいない。それでも彼女は今、フォンテーヌで最も有名な調香師だ。エレガントな上流階級の淑女たちは、彼女が調合した香水一滴のために、宝石一粒の代価を喜んで支払う。ある商品は1本57万モラにも及ぶ。エミリエは「千織屋」のと提携しており、試作品のサンプルを送っている。千織は届いた香水を店員のエローフェにこっそり試着室に振りまいてもらって、顧客たちの反応をエミリエにフィードバックしている。フォンテーヌの香水業界でかなり有名な調香師であるエミリエの本当の職務は他にある。彼女の父親はマレショーセ・ファントムの警察隊員で、母親は法医学者である。エミリエは同年代の子供たちが絵本を読んでいた頃、既に母親の専門書を読んでいた。不思議な化学反応に魅せられ、彼女は関連する知識を勉強し始めた。その後、自身の職業を「特殊清掃人」と名付け、元々鑑識に使われていた化学薬剤を調整し、現場の遺留物を消す清掃用の薬剤に変えた。1.3.5. その他の店舗ヴァザーリ回廊には他にも多くの店があり、の果物屋、の料理屋、のダーモヴィル雑貨店(*)などが軒を連ねている。かつてファッションデザイナーのを敵視していたユーサーの建物もこの回廊に位置している。*:NPCシルヴィアは、ダーモヴィル雑貨店はナルボンヌエリアにあると発言している。マップ上の表記からヴァザーリ回廊と推定したが、どちらが正しいかは不明。1.3.6. ブノワ・ルロワの家ある日、スチームバード新聞社のは、旅人に半年以上前に新聞社に寄せられた依頼について伝えた。それはという年配の男性が、ヘルパーのアルバイトを募集しているというものだった。旅人とパイモンがその仕事に志願した時、娘のモルティシアと、その夫のの不審な態度に気が付いた。その後の調査により、モルティシアの本名はだと分かった。オータムはブノワの養女で、過去に婚姻を結ぶという名目で商品のように他人に二度も売られた。一度目の結婚相手はすぐに亡くなり、ブノワは大屋敷(ヴァザーリ回廊にある家だと考えられる)を手に入れた。二度目の結婚では、オータムを追いやるためだけに適当な人を選び、ブノワは家やその他の財産をすべて手に入れた。オータムは二人目の夫との間に子を成した後、夫を殺した。オータムはに送られてしまったため、娘はブノワに引き取られたが、その子はよそに追いやられてしまった。オータムはその後、アトーズの協力を得てメロピデ要塞から脱走し、ブノワと娘を探した。最終的にが彼女の娘なのではないかと示唆される。最終的な結末はゲーム内で選んだ選択肢によって変化するが、モリィは少なくとも、今の養父母の元で幸せに暮らしている。1.3.7. フリーナの新居が天理を欺き、の長きにわたる演出によってフォンテーヌを救った後、フリーナはパレ・メルモニアから去り、新しい部屋を借りた。しかし、責務を完全に果たした役者がどの方向に進むべきかなど、誰も答えを示すことはできず、「自由」はその時点でも漠然とした概念に過ぎなかった。荷物は部屋の隅に積まれたままで、片付ける気力も起きない。ただベッドに横たわり、がらんとした天井を見つめていた。ある日、フリーナの家にが訪問した。クロリンデはフリーナの今の居住環境に驚きつつ、すぐに彼女のために費用を負担してもっといい部屋を用意したいと申し出た。フリーナはあの手この手でようやく彼女の申し出を諦めさせたが、彼女も絶対に引き下がらないつもりのようで、仕方なく部屋と荷物を片付けることにした。現在、新しい彼女の邸宅はヴァザーリ回廊のボーモント工房の向かいにある。彼女の家からそう遠くない場所に、かつてフリーナが手伝った劇団の稽古場がある。水神を演じきった後、フリーナはこれ以上他人を演じたくないと考えていた。しかし、劇団の「連続少女失踪事件」との関わりを知った後、劇団の顧問として「水の娘」の公演に参加することを決意した。しかし、主演のドルフィーが病気のため、最後のシーンでフリーナが代わりに歌うことになった。その舞台の後、フリーナは他人を演じたくない気持ちはありつつも、自分を表現したい気持ちはあり、舞台に戻るのもそれほど嫌ではないと考えるようになった。1.3.8. ブーフ・ド・エテの館概要ヴァザーリ回廊にあるブーフ・ド・エテの館は、清潔な壁と綺麗に磨かれた窓を備えた美しい建物で、身だしなみが整い、礼節をわきまえた子供たちが出入りしている。ブーフ・ド・エテの館の所有者として登録されている人物はここに居住していない。そればかりか、近所の人々は、その名を聞いたことすらないという。なぜなら、書類の署名は偽名であり、本当の家主は別の人物だからだ。夜が訪れ、館の扉が閉まると、闇の中に子供たちの囁きが響き始める。そしてその声には、「お父様」という言葉が混じる。「お父様」の言葉と共に、敬慕を滲ませる者、恐怖の表情を浮かべる者、あるいは複雑な面持ちになる者…反応はさまざまだが、その言葉遣いに注目すれば「お父様」が彼らに深く敬われていることがわかるだろう。子供たちのいる組織は「」と呼ばれており、ファデュイに属している。「壁炉の家」は世界各地の孤児を受け入れており、気高きブーフ・ド・エテの館も、「家」の一つに過ぎない。そして、子供たちが「お父様」と呼ぶ人物…つまり「壁炉の家」の主こそ、現在のファデュイ執行官第四位——である。ファデュイや彼女に対する世の評価はまちまちだが、「家」で暮らすほとんどの子供たちにとって、「お父様」は人生で最も重要な存在だ。「『お父様』がいるからこそ、ここは本当の『家』になるんだ。」の再建自身も壁炉の家の出身で、先代のファデュイ執行官「召使」(「お母様」として知られている)のもとで育った。彼女は、子供たちに戦う術を教えて殺し合いをさせ、最も才に恵まれた「王」が勝ち残るまで続けさせた。無数の死骸を踏み潰して一人勝ち残ったアルレッキーノは、唯一「お母様」に認められた「王」となった。その一年後、アルレッキーノはクルセビナを殺した。スネージナヤの女皇は彼女を許し、「召使」を引継ぎ、アルレッキーノという新しい名を授かった。アルレッキーノは「お母様」という肩書きを廃止し、自分の本名を捨て、「お父様」アルレッキーノとして、壁炉の家の再建に取り掛かった。新しい壁炉の家のルールは厳格ではあるが、冷酷ではない。「任務」を達成する方法は自分で選択でき、仮に失敗しても以前ほど痛ましい罰は与えられなくなった。ルールを破ったり立ち去ることを決意した者についても、処刑することなく「瓶中の炎」を飲ませて記憶を失くさせることで、新しい自分に生まれ変わらせ去るように促した。アルレッキーノの「指導」の子供たちへの「指導」を象徴するエピソードがある。あるとき、壁炉の家のある少女が頑なにネックレスを外さなかったせいで、夜間の任務で居場所が漏れてしまった。アルレッキーノは少女の部屋に入った。己の過ちを理解している少女は、ネックレスを外して机に置き、おどおどしながら立っていた。アルレッキーノはネックレスを手にとって一目見ると、少女に歩み寄り、その白い首に着けてやる。ベルベットのリボンで少女の髪を結び、宝石の嵌め込まれたピアスを着けてやり、こう言った。「容姿が気になるようになったのは悪いことじゃない。しかし、これらのキラキラした小物に虚栄心を煽られ、心を揺らすのは感心しない。」「これはこのまま着けているといい。これに慣れれば、どれほど美しい宝石や装飾品も、結局は冷たい無機物にすぎないと分かるようになるだろう。」「これは君に課せられた新たなレッスンだ——自分の感情がどこから来るのか、しっかりと認識しなさい。感情に支配されるのではなく、自らそれを支配し、利用するんだ。」「マレル」壁炉の家のメンバーは隠密作戦を遂行するとき、安全を確保するため、様々な暗号を定めている。そのうち「マレル」という暗号は「召使」が自ら決めたものだ。「マレル」とは、フォンテーヌの子供たちがよく遊ぶ遊戯のことである。地面に決まった順番でマスを描いて、マスの中にお手玉を投げ、ルールに従って順番にマスの中と外をジャンプする遊びだ。いつからこんな遊びが流行り始めたのか、誰がルールを作ったのかは分からない。しかし壁炉の家の幼い子供たちは皆、年上の子から「マレル」を教わり、共に遊んだ。軽やかなジャンプ、明るい笑い声…子供たちにとって「マレル」の記憶は、太陽のように輝く思い出に結びつくものだ。だから、その暗号の意味を「安心」にすべきか、それとも「危険」にすべきか「お父様」が迷った時、子供たちは不思議でならなかった。かつての壁炉の家では、マレルは遊びと言えるようなものではなかったことを、今は誰も知らなかったのである。当時、子供たちは大人の監視下で、地面に描かれたマスに次々と飛び込ませられた。マスからはみ出してはならず、飛び込むリズムを乱してはならない。失敗した先にどんな罰が待っているかは、尋ねるまでもない——マスの外側にびっしり聳え立つ、尖った刃がその答えだ。バランスを崩す者、体力が追いつかない者、恐怖のあまり踏み外してしまう者…多くの子供たちがマスの外側に倒れていった。深紅に染まった地面は、沈痛な過去を物語っていた…あの頃は「マレル」と聞いただけでみな顔を蒼くしたものだ。「安心」などという言葉を連想する人など誰一人いなかったであろう。だが、しばらく考えた後、アルレッキーノは「安心」のほうを選んだ。今の子供たちにとって、マレルは「危険」とはまったく関係ない、笑顔を連想させる遊びだ。ならば、つらい記憶は彼女の心だけに留めておこう。過去の血や塵など振り払って、子供たちにはもっと明るい未来を見せるべきだろう。リネとリネット話術に長け、優れた表現力を持つフォンテーヌの名高い魔術師とアシスタントのは壁炉の家で育った。幼い頃、両親を亡くしたリネとリネットは生計を立てるため、人が行き交う街角でマジックショーを行ってお金を稼いだ。ある日、貴族がリネを訪ねてきて、二人を養子にしたいと申し出た。その貴族は人目を惹くために、リネを様々なパーティーに出席させ、社交界のコネを広げようとした。あるパーティーでのショーが終わった後、リネットが帰ってこなかったため、行方を尋ねた。養父は、リネットが大物のお眼鏡にかなったため、贈り物として差し上げたと答えた。リネは「大物」の邸宅の場所を聞き出して、邸宅に忍び込んだ。そこには、月明かりに照らされた床の血痕と、暗闇に佇む「召使」の姿があった。「召使」はリネットが被害に遭う前に助け、地下室からは数人の少女が見つかった。「召使」はリネの素質を見て、壁炉の家に勧誘した。「君と私たちの利益は一致しているはずだ。壁炉の家は君を歓迎しよう。君は、ここで裏切られることはない。そして、裏切りも一切容認しない」貴族に裏切られたばかりのリネは、その言葉をすぐ鵜呑みにはできなかった。しかし、その直後に「召使」は、リネ達を養子にした貴族を始末して、二人を自由にした。フレミネ壁炉の家の子供たちの一人 は、が院長になってから、余った時間を利用して母親の行方を探し始めた。フレミネが完全に諦めようとしていたとき、アルレッキーノが突然彼にペンダントを手渡した。フレミネは、自分は捨てられたとクルセビナに言われていたが、真実は違っていた。フレミネの家が背負った借金はついに返済不可能な額にまで達していた。すると貪欲な高利貸しは、フレミネと母親の家を差し押さえただけでなく、フレミネ自身を借金の返済に充てようとしたのだ。母親として、そのような所業を黙って見ていられるはずもない。結局、彼女に残された選択はただひとつ——フレミネを「あの孤児院」に預けて高利貸しを近づけないようにし、その代わり自分がすべてを受け入れるということだった。アルレッキーノが高利貸しの拠点に辿り着いたとき、フレミネの母親は既に手遅れだったようだ。このペンダントは、母親の形見となった。「ブーフ・ド・エテの館」の創立記念日「ブーフ・ド・エテの館」の創立記念日、子供たちは家の飾り付けに大忙しだった。メンバーにとって、外で開かれるお祭りなど、彼らの暮らしとはまったく無関係な、冷たく無情なものであり、彼らに確かな温もりをもたらしてくれるのはこの家だけだった。リネの計画のもと、みんなは動き出した。リネットは記念日の飾り付けに使うものを山ほど買ってきて、他の子供たちと一緒に色とりどりのテープを飾り、手書きのお祝いメッセージを掲げた。フレミネはマジックの小道具がちゃんと動くかチェックしていた。リネはフレミネの腕を信頼していたので、今回の装置の設計をすべて彼に委ねたのだ。そしてリネはといえば、誰よりも忙しく動き回ってみんなの進捗状況を確認するとともに、オリジナルの盛大なマジックのために、最後の仕掛けを密かに仕上げていた。みんなの協力のおかげで、パーティーは無事に開催された。ホールはレコーダーから響く軽やかな歌声で満たされ、子供たちは踊ったり食事を楽しんだりした。この日は誰の誕生日でもなかったが、自分たちが生まれ変わる記念日だと、誰もが感じていた。クライマックスはもちろんリネ、リネット、フレミネが準備した創立記念日を祝う大がかりなマジックだ。部屋の真ん中にはマジックボックスが置かれ、クラッカーがパンパンと鳴り響き、空っぽだったはずのマジックボックスがひとりでに開くと、アルレッキーノが現れた。皆は呆然として…やがてあたりはシンと静まった。しかしそんな子供たちの反応を見ても、アルレッキーノは声を尖らせることはなく、リネが完璧に秘密を守り、マジックを期待通り成功させたことを褒めた。その夜、子供たちはアルレッキーノとデザートを分け合い、アルレッキーノはその場にいる子供たちにケーキを切り分けてやり、自身もそれを少し味わった。彼らのアルレッキーノがしばし重責を忘れて家族愛に満ちたひとときを楽しむことができたのは、リネの創立記念日のマジックにおける、最も不思議な部分であったと言えるだろう。フォンテーヌでの活動フォンテーヌで活動を行う「ブーフ・ド・エテの館」の目的は正当なものだったが、いつも過激な手段を取った。の影響力を使ってフォンテーヌ廷の内部をコントロールしなくては、問題が起きないことを保証できないからである。「執律庭」にはからの資金援助を受ける役人がおり、館の作戦のために情報を提供し、不当な行為による影響を排除してくれる。役人にとっても、それなりのリスクを伴うが、フォンテーヌには「召使」のような直接行動を起こせるだけの力を持つ者がいないと役人は感じていたため、すべてを完璧にこなした。しかし、ついにその役人の行いがばれて逮捕されようとした瞬間…役人は緊急連絡用の装置でリネに連絡を入れた。その役人は、たとえこれが単に彼らを捜査の手から逃がすためのものだったとしても、今までの協力は正しいと信じた。警察隊員が役人を護送しようとした矢先…周囲から濃い煙が立ちのぼり、役人はその数秒間にまばゆい炎の光を見た——その隙に役人はによって救出された。警察隊員たちは犯人が飛行装置を使って現場を逃亡したと考えたそうだ。予言への対抗壁炉の家は全力で「予言の危機」に抗おうとした。ブーフ・ド・エテの館はアルレッキーノも含めてフォンテーヌ人だ。彼らは自分の故郷を守ることを諦めない。子供たちは、予言に備えてを配った。さらに、アルレッキーノはある方法で水神がを持っていないことを確認した。この事実がの秘密と関連しているのではないかと疑い、子供たちをメロピデ要塞に送った。予言が実現しはじめたとき、とアルレッキーノ達は共同して救助活動を行い、不幸中の幸いにも被害状況をなんとか最小限に抑えた。1.3.9. 七聖召喚『スチームバード新聞』を売る子供で、同年代からはフォンテーヌ廷の情報通と言われている。最近、パバンはよく情報を聞きに来た人たちと七聖召喚をプレイしている。彼は、もし自分が勝ったら新聞を購買するよう賭けを持ちかけるのだが、残念ながらパバンの腕前はあまり優れたものではない。市民にとって馴染みのある八百屋の店主。輸入された果物や野菜を売っているため、ユージーンは外国の商人と交渉する機会がそれなりにある。その機会に彼女は地元のプレイヤーがあまり使わない戦略を知り、そしてフォンテーヌ廷の七聖召喚界隈で、なかなか良い戦績を納めている。1.4. ナルボンヌエリアナルボンヌエリアは、ヴァザーリ回廊の南西側のサブエリアで、全土のファッショントレンドをリードする香水店やアパレルショップがここに集まる。船を降りた直後にこちらを目指す観光客も多い。書籍に「ナルボンヌの聖剣」という言葉が登場するため、と関連がある土地の可能性がある。1.4.1. スチームバード新聞社概要このサブエリアの主要な建物の一つに「スチームバード新聞社」がある。スチームバード新聞社はに本社を置く、様々な地域で非常に高い影響力を持つ新聞社だ。はスチームバード新聞の編集長で、新聞社としての仕事以外にも住民の悩みを聞くという重要な責務を担っている。住民のために様々な日常の記事を刊行したり、パレ・メルモニアと協力して執律庭が出す危険な魔物や指名手配の情報を公開し、新聞社の情報網を使って最適な能力を持つ人々に依頼を出したりする。サー・アーサーの誘拐事件サー・アーサーはで、スチームバード新聞社の社名の由来でありシンボルだ。サー・アーサーは毎日新聞社の前でニュースを読み上げている。ある日、そのサー・アーサーが誘拐されてしまった。の物証管理員と嘘発見器のが調査に乗り出し、編集者ユンカーが関与していることを突き止めた。ユンカーは、三十年前のある事件で、新聞社が天才科学者モッソ・ランボロッソを死なせていた事実を知り、これを告発するために犯行に及んだ。さらに、とあるファデュイ執行官と取引をして、スチームバード新聞社を乗っ取るように協力を仰いだ。ユンカーはトゥローザと旅人達を罠にかけ、命を奪おうとしたが、旅人達は何とか逃げ延びた。その後、ユンカーの協力者の執行官はユンカーを罰して、舌を抜いてエピクレシス歌劇場に投げ込んだ。その口からは紙切れが見つかり、紙切れには旅人達に敵対する意志は無く、詫びる旨のメッセージが書かれていた。関連項目:シャルロットスチームバード新聞の記者は、いつも「真相」を求めて駆け回っている。シャルロットの父ガラノポロスは、野生動物の生態が専門のベテラン記者で、「観察」に興味を持つ娘の才能に気づいた。彼は娘の十歳の誕生日に、特注の写真機を贈った。シャルロットは、後にその写真機に「真実」を意味する「ヴェリテ」という名を付けた。ヴェリテの帽子とネクタイはに作ってもらったオーダーメイドの品だ。ガラノポロスがシャルロットの撮影した写真をスチームバード新聞に送ると、編集者たちは一瞬でその写真に魅了された。シャルロットの卓越した写真技術が評判を呼び、女史がシャルロットのもとを訪ねた。ユーフラシアは、シャルロットを「専属記者」として招き、撮影や取材、執筆を任せたいと告げた。普段は人の好いガラノポロスだが、「専属記者」の件に関しては断固反対した。彼は娘に心根の腐った、腹に一物ある人々と付き合ってほしくなかったのだ。しかし、シャルロット自身は、まだ発見されていない無数の「真実」を発掘して、すべての真実を明らかにする義務があると考えていた。両親は娘の決心に気づき、沈黙で応えた。こうしてシャルロットはスチームバード新聞社の一員となった。その後、彼女はフォンテーヌ廷の記者たちが最も価値を置く「ラヴェール賞」を何度も受賞した。シャルロットの執筆した有名な記事に「威信はどこに?『ラヴェール賞』選考に不正の疑い」というものがある。この記事は、ラヴェール賞の選考委員会常任委員の受け取った金銭、不公平な選考基準について詳細に指摘したものだ。報道が発表されると、記者たちは「ラヴェール賞」選考委員会の所在地に押しかけた。シャルロットは呆然とする選考委員たちに多くの質問をした。選考委員たちはしどろもどろに釈明したが、その説明は穴だらけだった。うろたえた彼らは質問の仕方がルール違反だと言い捨て、そそくさと姿を消した。だがシャルロットの「報道」はまだ始まったばかりだった。彼女はスチームバード新聞にラヴェール賞関連の記事を続けざまに発表した。報道を受けて、執律庭はラヴェール賞の徹底調査に乗り出し、卑劣な者たちは当然の報いを受けた。選考委員会も各方面の監督の下、組織を一新した。コラム「星座相談」の占星術師アストローギスト・モナ・メギストスは、スチームバード新聞のコラム「星座相談」に寄稿している。は生活費を稼ぐためにライターの仕事を始め、これが彼女の安定した最大の収入源となった。しかし、原稿料が入ってくると、すぐにたくさんの占星資料を購入する。そして、また貧困な生活に戻ってしまう…これを毎月繰り返している。モナが寄稿の機会を得たのは全くの偶然だった。前任の作家が旅をしている時、たまたま「変わった占星術師」の噂を耳にした。彼は星占いファンとしての好奇心に駆られるまま、モナを訪問した。モナと会話を交わした彼は、モナの知識量に惹かれた。ちょうどその時期、作家は引退について考えていた。お金に困っているモナを助けようと、彼はスチームバード新聞の編集長にモナを紹介した。モナの最初の記事「占星術入門」が発表されて以来、気軽に楽しめる「星座相談」の雰囲気が一変した。毎回、半分以上の内容が「星体運行」のような難しい話題で占められ、参考文献やたくさんの注釈に加えて、手描きの星の挿絵まで描かれている。編集長は「このような難解な記事では読者に受け入れられないのでは」と心配した。だが意外なことに、新聞社に読者からたくさんの手紙が届いた。「本当にすごいね。よくわからないけど、とにかく面白い。今日から私は『アストローギスト・モナ・メギストス』先生のファンだ」その後、編集長から寄稿継続の連絡をもらったモナは、ほっと息を吐いた。フォンテーヌの予言とモナあるとき、スチームバード新聞社はをのシンポジウムに招待した。モナはそのシンポジウムにて、占星術師として以下のフォンテーヌの予言についての見解を述べることになった。人々はみな海の中に溶け、水神は自らの神座で涙を流す。そうして初めて、フォンテーヌ人の罪は洗い流される。モナが招待を受けた当時は、誰もフォンテーヌが大変な状況になるとは予想だにしていなかった。モナは、この予言はフォンテーヌ、テイワット全体の運命に関することで、このようなレベルとなると誰にでもできるようなことではないと述べた。また、もしこのようなことができるのなら、占星術師ではなく予言者と呼ばれるべきだと述べた。1.4.2. サロン・カリタサロン・カリタのメンバーの一人リケティは、元特巡隊のメンバーで、歳を取ってからは共律庭に移った。ジャストゥという人物もサロン・カリタに所属しており、フォンテーヌ水域の汚染問題の未来について考えている。サロン・カリタでは、フォンテーヌの司法を深く研究し、裁判制度の改善を促進するため、第36回グループ討論会を開催する予定だ。テーマは「執律庭の公共安全に関する経費の過度な使用状況と、フォンテーヌ廷における公共の安全確保との関係性」である。他にも「水質汚染がフォンテーヌの動物に及ぼす害に関して」といったテーマの講座も開かれるようだ。1.4.3. ホテル・ドゥボール概要ホテル・ドゥボールは、公式のガイドハンドブックにオススメスポットとして載っている有名なレストランだ。ここは、かつてのグロリア劇場の跡地に建設された。グロリア劇場が壊滅した後、誰かによって買われ、改築され、数え切れないほど所有者が変更された末に、今のホテル・ドゥボールとなった。三十年前、ここには背の低いテーブルが四つと、椅子が八脚あるだけで、店員は一人きりでオーナーを兼ねていた。今となっては、美しい絨毯や高価な装飾品で埋め尽くされ、二階まである客席には次々と客が訪れるようになった。オーナーは「芸術は美食の最高の調味料だ」と信じており、レストランで公演してもらうために各界から芸術家を招待している。丁寧に設計された室内空間は、客がどこに座ろうとも、常に公演の全貌を気持ちよく堪能できるようになっている。芸術愛好家にとって、このような景色は料理よりも魅力的に映るかもしれない。レストランでは、、セットにエリニュス島産「サッシカ」と「オルネラ」をブレンドした赤ワイン、一日十六個しか販売されない限定ケーキなどを販売している。接待係は、上流社会の紳士淑女の誰しもが、優雅で品のある外見に相応しい内面を持ち合わせているわけではないと考えている。「この店で一番古くて、一番高い酒はなんだ?それを一本持ってこい」もしこのような教養のない要求をすると、サンギネッティの機嫌を損ねてしまうだろう。関連項目:映影「薔薇と銃士」の期間中、ホテル・ドゥボールのオーナーは、二階を映影「薔薇と銃士」のロケ地として開放した。この映影ではがプロデューサー、が監督を務めた。旅人とパイモンに加えて、も撮影クルーに参加した。チューリップとアイリスという姉妹が主役で、姉のチューリップ役をシュヴルーズ、妹のアイリス役を綾華が演じた。この場所では姉妹が伯爵家にいる頃のシーンが撮影された。このシーンの最後、二人の母親が殺害されてしまい、姉妹は復讐を誓い、家を出ることを決意した。この映影は最終的に高い評価を得て、元水神フリーナの名を冠した栄誉ある「フリーナ賞」を獲得した。1.4.4. その他の商店ナルボンヌエリアには他にも商店がある。チェシルの店は、フォンテーヌ廷で一番宝石の種類が豊富で、各種工芸品も販売している。ある日、旅人とパイモンは、メリュシー村の近くでのが見つけたをチェシルに見せた。チェシルはその鉱石の神秘的な色合いと光沢、滑らかな手触りに興味を持ち、この鉱石を買い入れ、工芸品を作ろうとした。しかし、この鉱石は分割して磨いた後、当初の光沢がなくなってしまうことが分かった。チェシルは石を処分しようとしたが、ある時計職人が硬度の高さを見込んで、プロトタイプの時計を作った。鉱石はこの時計内部のコア部品として使用され、既存の材料よりも優れていることが分かった。チェシルは、プーカから安定的に鉱石を仕入れて、この時計の量産化を決意した。そして、ゆくゆくはこの時計を改良して、メリュジーヌ専用モデルを製作するつもりだ。チェシルの隣には、の雑誌売り場がある。彼は今のところ小さな雑誌売り場の店主だが、スチームバード新聞社に入るという夢を持っている。夢を叶えるため、文章を練習し、語彙を蓄え、絶え間なく言語の芸術を学んでいるそうだ。関連項目:1.5. リヨンエリア1.5.1. 概要リヨンエリアはフォンテーヌ廷の北東部のサブエリアである。1.5.2. 冒険者協会冒険者協会には受付係のが立っており、話しかけると様々な任務を受注できる。依頼主は様々で、や劇団、クロックワーク工房などである。1.5.3. リーヴァとカロンの店冒険者協会の通りには、レシュッツのクロックワーク工房(以降工房と記載)、北国銀行、ルポート時計店(以降時計店と記載)が並んでいる。工房と時計店の店主は兄弟で、工房の店主はリーヴァ(兄)、時計店の店主はカロン(弟)だ。ある日、リーヴァは、決闘代理人を物語の主人公にした新しいクロックワーク玩具プロジェクト「決闘代理人プロジェクト」を計画した。しかし、時計店の新発売のおもちゃが大人気となり、工房の客が奪われはじめた。そこで、工房の店員は旅人とパイモンに敵情視察を依頼した。旅人たちが時計店を訪ねると、カロンはすぐに兄の思惑を理解したが、包み隠さずおもちゃについて語った。このおもちゃはでからインスピレーションを得たものだ。カロンはモンド旅行中に清泉町の外でベネットと出会った。彼は出前サービスの依頼遂行中で、時間に間に合わなかったうえに、料理をこぼしてしまった。カロンは親切心から料理の手伝いを申し出たが、薪は濡れ、鍋に穴が開き、皿に石が飛んできて割れてしまった。ベネットはなんとか依頼任務は終わらせたものの、お客さんから「料理に入っていた石で歯が割れた」という理由でクレームを受けてしまった。その後、ベネットはお礼に、モンドでもあまり人のいないところを案内して回った。カロンはその素晴らしい景色に魅了された。カロンは旅行から帰る日にベネットに「不運な体質で困ってないか」と尋ねた。そうすると、ベネットは親指を立てながらこう答えた。「世の中には色んな人がいるけど、一番ついてないのはきっとオレだろうな」「でも、それってつまり、オレは一番勇気のある人でもあるってことなんだ。だからこそ、オレはオレにしか見れない景色を見つけることができる。」その後、工房は決闘代理人プロジェクトを公開して、街全体に広告を打ち出した。最初はリーヴァの思惑通り、店は一気に盛り上がった。しかし、予約をする人は少なく、掲示板の評価欄にも特に好評らしきコメントはなかった。その代わり、「誠意が足りない」「中身が貧弱」「時代遅れ」といったコメントに溢れた。リーヴァは自身の考えの誤りを認めるどころか、カロンが人を雇ってデマを流していると疑った。リーヴァは、カロンの過去の裏切りについて腹を立て、偏見を持っていた。二人の家は代々、クロックワーク工芸で名を知られた家だ。カロンは小さい頃からクロックワーク玩具の制作が得意で、リーヴァは優れた商売のセンスを持っていた。二人しておもちゃが大好きで、大人になったら最強のおもちゃ屋さんを開こうと約束していた。しかし、大人になると、どちらかが家業のルポート時計店を継がないといけなくなった。リーヴァは父親と大喧嘩した末に、独立して店を立ち上げた。一方、カロンは説得に折れてしまい、家業を継ぐことにした。カロンは、何も成し遂げられなかったときに惨めな姿で家に戻ることを恐れていたためだ。つまり、趣味を仕事にすることのプレッシャーを背負えなかったのだ。旅人の介入によって、兄弟はお互いの思いを話し、わだかまりが解けはじめた。カロンはおもちゃのインスピレーションはベネットだったが、リーヴァのために作ったものだと告白した。カロンは、リーヴァとベネットは冒険心を持っている点で共通しており、ベネットは冒険の中で生きているが、リーヴァは生活の中で冒険していると考えた。最終的に、リーヴァは決闘代理人プロジェクトで集めたデータをカロンに渡して、もっと面白いおもちゃを作れるようにと願った。現在、工房では様々なクロックワーク玩具を販売している。その中にはの作ったクロックワークペンギンも含まれている。関連項目:1.5.4. 北国銀行北国銀行は工房と時計店の間に挟まれて位置しており、ある意味で仲裁役になっている。リーヴァは実は過去にこの土地の購入を検討していた。時計店の隣に店を構えて、競争を繰り広げるつもりだった。しかし、考えが変わって北国銀行に安値で譲った。リーヴァは隣に店を構えることで弟をその場所から追い出してしまうことを望まなかったためだ。リーヴァの目標は「最強のおもちゃ屋になる」ことであり、「家族と対立して、弟の店を追い出す」ことは本末転倒だと考えた。1.5.5. 千織屋概要千織屋はで人気を博す、稲妻人デザイナーののアパレルショップだ。千織はあまり店におらず、逆にいるときは機嫌がいいことを意味しているという。しかし千織がいるとき、運が悪いと、とんでもないトラブルに遭遇することもある。例えば、非常識な客が窓から外に放り出される…などだ。「ごめんなさい。最近、天気が悪いからか道端のゴミがよく店に入ってくるの。でも、もう片付けたから気にしないでちょうだい。」千織のスタイルはデザインの理念として「抗争」と「革新」の要素を多く取り入れている。女性の服に男性の服に使う裁断方法を用いるなどありえないし、また男性の礼服に女性ものの生地を使うなどあってはならないこと——このような「規則」に反したデザインだ。千織が服を作るときも同じである。生地の扱い方を見るに、まるで生まれてこの方、布を見たことがないのではないかと思ってしまう。布目の方向を無視して、思いもよらない角度から裁断したり、途中で新たな要素を追加してはそれを否定したりもする。時には刀を抜いて、上質な生地を素早く切ることもある。その様子は服を仕立てているというより——決定権を巡って、刀を手に生地と決闘しているかのようだ。そして、最終的に勝つのはいつも彼女のほう。しかし、彼女の服はある種の魅力を持っており、人々を惹きつけてやまない。「規則」への反抗と否定が合理的で、間違っているのはこちらのほうだと言われている気さえしてくる。情報屋いつからか「情報屋」が千織屋のもう一つの呼び名になっていた。派手な格好をした富豪や政治家たちは、まるで色鮮やかな蝶々のように、「情報」という名の花粉を艶やかな花である千織屋にばら撒く。だがそういった人たちが千織屋を訪れる目的は、何も情報を千織屋に流すことだけではない。他の蝶々に自慢することこそが本当の目的である。その者たちにとって、自分が持っている情報の数は服を飾る宝石の数よりも誇らしいものなのだ。できることなら、はそんな話を耳にしたくない。服を作るのに集中できなくなってしまうからだ。しかし情報の使い道を知ってから、彼女は少なからず他人のために気を留めるようになった。友人の利益、もしくはフォンテーヌ廷の安全に関わることであれば、彼女は親切に相手に手紙を送ったり、直接伝えたりして注意喚起する。フォンテーヌ・ファッションウィークには、年に一度のファッションの祭典「フォンテーヌ・ファッションウィーク」というものがあり、かつて千織も参加した。ある評論家はこう言った——良い服は「見せる」だけでなく、「聞かせる」こともできると。にはそれができた。彼女の縫った一針一針が、物語を聞かせてくれる。波の囁き、森の息吹、砂漠の甘泉。もちろん、ファッション業界の「古い勢力」の一部は、自分の縄張りをよそ者に占拠されることを許せず、旗を揚げてこの「侵入者」に宣戦布告をした。しかし、その者たちは結局、誰もが敗北した。こうして「千織」というブランドは、一躍有名になった。「絶対に屈しない」旅人達と出会って初めてのファッションウィークでは、千織屋が犯罪者と関係を持っているというデマが新聞に掲載された。これは、かつて協力関係にあったユーサーの仕業だった。このデマの反響は大きく、多くの顧客が注文をキャンセルし、卸業者さえ取引を一時停止した。それでも千織は諦めずにファッションウィークに向けて準備した。店にある服をすべてバラして服を作り、貝殻でアクセサリーを作った。は千織屋に込めた「絶対に屈しない」という理念を体現し、ファッションウィークのパフォーマンスを無事成功させた。その後、彼女はブランドロゴを発表し、千織屋に新しい看板を掲げた。関連項目:1.5.6. バーティンの珍奇館バーティンの珍奇館ではジュエリー、楽器、香料、記念品、芸術品の傑作など、様々な珍しい工芸品が展示されている。しかし、実を言うとこの店のメインはコスチュームのデザインだ。店主は新しいデザインのインスピレーションを探すため、様々な宝物を集めている。彼女が追求する芸術の理念に従って、インスピレーションを得られなくなった貴重なコレクションを、冒険者が持っていると交換してくれる。1.6. パレ・メルモニア1.6.1. 概要パレ・メルモニアはの安定を維持する「心臓」で、全ての公務を処理する議事堂であり、公共サービスを提供する場である。そして、フォンテーヌ廷の最も高い処に位置する建物だ。1.6.2. フリーナの旧邸宅が公職を辞する前、彼女は最上階のスイートルームに住んでいた。もしフリーナとの面会を希望する場合、必ず事前に予約が必要だった。フリーナは大スターであるため、面会予約は常にいっぱいだった。かつて、予約をせずに屋上から飛び降りて潜入しようとした者もいたが、その人は現在で真摯に働いている。1.6.3. ヌヴィレットの執務室パレ・メルモニアの受付ではのセドナが働いている。そのすぐ隣には最高審判官の執務室がある。ヌヴィレットのスケジュールは常にいっぱいで、面会を求める場合は用件の分類に応じて共律官に申請が必要だ。彼の執務室には、ここ数年の事件の詳細をすべて網羅したファイルが保管されている。かつて、が冤罪でに送られた際、ここでとヌヴィレットとの面会が行われた。「召使」はタルタリヤの身柄をスネージナヤに引き渡すように要求したが、実際のところ、彼女にとってタルタリヤは交渉材料にしか過ぎなかった。彼女の本当の目的は、メロピデ要塞に隠された「秘密」と、神の心の場所を知ることだった。1.6.4. その他のフロアの執務室と同じフロアには共律庭があり、階上には法を執行する機関「執律庭」ともある。1.6.5. 一騒動世界任務「一通の知らせ」ある日、共律庭のの部署に、他部署に出す通達書を起草しろという指示があった。その内容は、情報漏洩防止のため、業務以外の用途で職員がみだりに写真機を持ち込んで撮影してはならないという内容だった。以前にも、デスク回りのインテリアを自慢するために、デスクの写真を撮った者が居た。彼は「写真機愛好家協会」のメンバーで、撮った写真を他の会員に見せていた。会員の中には記者が居て、共律庭内部の通知文書らしきものに気づき、情報漏洩だとスチームバード新聞に書かれてしまった。アイオーヌはロアルテからの指示を受けて、この仕事を進めようとした。しかし、悩みどころは、共律庭には写真機の取り締まりを担当する部署がないことだった。アイオーヌは、秘密保持関連業務の担当のガッティーノ、または共律庭の人事担当のディフォール、どちらに相談すべきかを決めかねていた。二人と話をしたが、お互いが主たる責任を持とうとしないため、ケンカになってしまった。見かねたロアルテが仲裁に来て、複雑な業務を分担してシンプルにするように提案した。機密を漏らした者を捕まえるのはガッティーノ、写真機持ち込み禁止の周知はディフォールという責任分担となった。二人のケンカの理由は、他の部署に仕事の口出しをされるのも、大きな責任を負うのも嫌だったためだ。ロアルテの提案によって二人の不満は解消され、それなりに納得して仕事を始める気になった。世界任務「些細な出来事」この件が解決したのも束の間、はタイプライターのキーキャップを紛失してしまった。彼は自費でから購入しようとしたが、共律庭の備品修理には公費を使わなければならない。もし自費で購入して精算しなかった場合、年末の経費チェックで辻褄が合わなくなってしまうからだ。アイオーヌはコーネリアを訪ねて経費精算について尋ねた。経費精算は一件ずつ処理され、一か月単位で精算書を集計して、月末にまとめて枢律庭で決裁することになる。その決裁は共律庭全体の給与支払いと関係しているため、あまりに額が多い場合は枢律庭がに確認をしないといけない場合もある。そしてヌヴィレットが個別の経費申請に疑問を抱くと、担当者が書面で説明することになっている。この手続きには時間がかかるため、コーネリアは仮の経費申請書を出す方法を案内した。その方法で無事にキーキャップを購入することが出来たが、翌日ヌヴィレットからこの経費精算についての質問が来た。タイプライターを丸ごとでなく、キーキャップ一個だけ経費精算するのは何故か、というものだ。精算明細書には、タイプライターはあるがキーキャップが無く、新しい精算項目になるため、キーキャップ一個だけを経費精算する理由を詳しく説明した文書を提出しなければならなくなった。世界任務「とある印章」その後、は写真機持ち込み禁止の提案書を作成し、共律庭の公印を貰おうとしたが、新型オートスタンパーが動かないトラブルに見舞われた。書類の調整や、機械の検査を繰り返しても動かなかった。最終的に旅人がスタンパーを思いきり叩くと、ついに動き出した。書類が完成し公印を貰ったため、すべてが解決したように見えた矢先、また悪いニュースが舞い込んだ。情報漏洩防止の注意を呼びかるように言い始めたカルシックス本人が、情報漏洩の現行犯として捕まってしまった。彼は写真機で自分のオフィスを何枚も撮影して、写真を記者に送った。その中の一枚に、彼自身の会議の記録が写り込んでしまった。その議事録の内容が、彼が以前行った講演とは全く関係ないことが明らかになった。こうして、カルシックスのオフィスはお笑い草になってしまった。さらに、経費精算を終えた後、失くしたキーキャップが別の共律官の机の下から見つかった。アイオーヌはショックを受け、気を失って床に倒れてしまった。そして、ものすごい速さで医者の元へ運ばれていった…。1.6.6. サーカス冒険団の事件ある日、サーカス冒険団がパレ・メルモニアの前でファイヤーショーを行った際、消防装置を誤って作動させてしまい、大量の文書を水損させた。これにより、当該団体の巡業公演資格は一時取り消しになり、「すべてのサーカス団体はパレ・メルモニア区域に近づいてはならない」という法律が制定された。1.7. サーンドル河1.7.1. 起源の市街地が拡張するにつれて、あらゆる影が次々と秩序の光に追いやられた。追いやられた影たちは、下水道を町にして、現在のサーンドル河になった。このサーンドル河の秩序を守れるのは、無論フォンテーヌ廷の官僚ではない。後にギャングと呼ばれる者たちの出発点は、秩序のために拾った銅パイプでワニを撃退したことだった。彼らはその後、暴力団の侵入や恐喝から商人や店を保護し、「同胞」間の紛争を仲裁して、新婚夫婦を祝福するようになった。サーンドル河の住民は、たとえ日光と雨露のない地下に住んでいても、有り余る勤勉さと強靱さによって、あるいは地表に住めるだけの権利を獲得し、あるいは身を寄せる「水の国」を地表のような美しい場所にできると信じている。当時の都市建設に使われていたツールの一部は、想定外の目的で(恐らく武器として)利用されることもあり、許可なく所有することを禁止された。関連項目:1.7.2. 四百年以上前の歴史と人物ポワソン町の包囲四百年以上前、サーンドル河にエドワルド・ベイカーという人物が居た。彼は当時有力なギャングだったと考えられる。フォンテーヌ廷がサーンドル河を整備しようとしたとき、エドワルド・ベイカーの一味は逮捕され、砂漠への流刑が決まった。護送される途中、エドワルドは仲間の助けを借りて逃げ出した。さらに、モン・オトンヌキで活動していた盗賊と組んでポワソン町を占領し、護送を担当する執律庭のメンバーを人質に取って、理不尽な要求を数多く出した。この事件は、最終的にエマニュエル・ギヨタンを含むファントムハンターによる介入で収まった。この争いによって、エドワルド・ベイカーや当時のポワソン町の町長ルノー・ド・ペトリコールを含む大勢の死傷者が出たと考えられる。関連項目:『偉大なる者』パルジファル詐欺や窃盗で生計を立てていた、とある泥棒姉妹はサーンドル河で育った。ある日、二人はマスター・コペリウスの喜劇を見た。それは、神出鬼没の義賊と攫われたサファイアの美女の話(*1)だった。マジックと詐欺、窃盗にはそれぞれ似たところがある。前者は演技と物語性に、後者は技法を頼りとしたものだ。姉妹は、自分のやり方と演技で舞台へと上がり、スポットライトを浴びると、ショーの光でボックス席の賓客も立ち見席の観客も公平に照らしたいという夢が芽生えた。こうして泥棒姉妹は、一人が「パルジファル」を演じ、もう一人が助手のジョセフィーヌを演じるようになった。最初のショーはエドワルドの酒場、用水路のそば、露店のそばで、泥まみれの子供たちのキラキラした目と住民の拍手の中で行った。その後、太陽のように明るいスポットライトが照らす、グロリア劇場でショーが行われるようになった。ショーの光が劇場の豪華なボックス席と立ち見席を照らすように、パルジファルの名は地上の街でも地下の街でも褒め称えられた。サーンドル河の整備が進むと、いつもジョセフィーヌ役を担当していた少女はそこに戻った。皆が知っているのはパルジファルで、助手は助手にすぎない。鋭い剣で真っ二つにされる助手が、いつも無傷であるように、少女はついに安心して暮らせる「居場所」を失った。そこで彼女は、自分たちだけの「大魔術」を考案した。(*2)「私は大魔術師——『偉大なる者』パルジファル!」「これからお目にかけるのは、皆さんが想像もできない夢の世界です!」「貴族も王もおらず、皆さんに向けられる刀剣もありません。」「生まれつきの富貴もなければ、抜け出せない貧困もないのです!」また、パルジファルはポワソン町の包囲に居合わせた人物でもある。当時、カール・インゴルドという記者(の養父)を「マジック」を使って真っ暗で安全な地下室へと退避させたという。その後、大魔術師「パルジファル」が決闘裁判を求めたというニュースが新聞で報じられると、彼女の予想外の犯行と相まって、フォンテーヌ廷では大きな話題となった。この決闘裁判の相手は、決闘代理人のマルフィサだった。マルフィサの出自が彼女の決闘での判断や態度を狂わせるかどうか、彼女とパルジファルは過去に繋がりがあったのか…そして、もっと俗っぽいものでは、両者のうちどちらの「戦闘力」が優れているかということが、当時の話題となった。パルジファルはこの戦いで命を落とした(*3)と考えられる。カール・インゴルドはその時には記者を辞職しており、決闘裁判での彼女の最後の戦いを記録できなかった悔しさで視界を滲ませた。*1: この喜劇のモチーフは、モンドのランドリッヒ家の嫡子パルジファルと、彼が思いを寄せた碧眼の魔女の可能性が高い。(関連項目: など)*2: 大魔術が何を指しているのかは現時点では明らかになっていない。*3: 聖遺物「審判の刻」の記述より推測。関連項目:『最強の決闘代理人』マルフィサマルフィサも、サーンドル河で育った人物だ。彼女はかつて、たとえ得られるのがカビの生えたパンのみだとしても、他人に錆びた刃を向け、平然と略奪した。その頃は、人生は何の意味もなく、何も成し遂げられなかったうえ、希望もないと考えた。しかし、期待していた死は彼女の元に訪れなかった。恐怖と不安の中で目を開けて見上げると——変わった服を着た少女(パルジファルだと考えられる)が優しく微笑み、どこから出したのか、一輪の花を彼女の耳元に飾った。「これはってお花よ。花言葉は…えーっと…希望(*1)。あなたの髪の色にぴったりでしょ?」「こんなに綺麗な目をしてるのに、絶望しか映さないなんて、もったいないと思わない?」「ねえ、サファイアの瞳を持つお嬢さん。このお花と引き換えに、あなたの心をくれないかしら。」これは、後に最強の決闘代理人と謳われるマルフィサが、初めて地上の世界に足を踏み入れた時の話である。彼女は、グロリア劇場の豪華なボックス席で見た、舞台に立つ魔術師と助手の笑顔をあまり覚えていない。覚えているのは、眩しいスポットライトの下で空想と共に咲き誇った花たちが、明るく純粋で、力強かったということだけだ。彼女は、希望を胸に抱くことで、光に触れたその命をルミドゥースのように咲かそうと決意した。その後、彼女は驚異的な才能を頼りに、その目に映るあらゆる槍術を真似た。冷酷で高潔な姿は、まるで「死」をダンスに誘っているかのようだった。ある日、とある剣客(ファントムハンターのエマニュエル・ギヨタンだと考えられる)と戦い、無敗の物語が終わりを告げた。狡猾な両目に惑わされ、故意に遅らせた動きに騙され、腕を剣先で刺された。彼女は自分の槍術の未熟さを痛感した。エマニュエルは、マルフィサの弱点は規則に囚われた槍術だが、それを捨てるのは難しいため、変わらない「正義」を「規則」とするように提案した。「地上の人間に正義なんて語る資格があるの?ちょっと強いからって、偉そうに説教しないで。」「狩人さん、いつか必ず、あんたは他のやつらと同じように私に敗れ、私の槍の下に倒れるよ。」そう答えたものの、最終的に彼女は決闘代理人となって「かくあるべき」正義を貫き、審判を免れようとする者たちに冷たき哀悼歌を捧げた。ポワソンを燃やす焔が、罪人のパルジファルを彼女の前に連れてくるその時まで——。つまり、マルフィサはかつて自分の人生を変えたパルジファルを、自らの手で倒したことを意味すると考えられる。(*2)その後、心がボロボロになったマルフィサはエマニュエル・ギヨタンを探し出し、もう一度全力で戦い、決着をつけようと考えた。しかし、彼はポワソンの包囲を指揮したことを機に、早々に引退していた。数々の問題に向き合うのに嫌気の差した彼は、強い酒に溺れていた。マルフィサは、自分でその事情を明らかにするため、彼の足跡と傷を追ってひたすら探した。しかし、追跡の終着点は意外にも、彼女が求めていた正義とは無関係なものだった。エマニュエル・ギヨタンはによって溶かされ、彼を追って結社に辿り着いたマルフィサも同様に溶かされてしまったと考えられる。「おお、今回はかの有名なマルフィサか…」「安心するといい。君の槍術は有用だ。」(*3)記憶が水に溶けてもなお、彼女は知らないままでいた。ルミドゥースベルの本当の花言葉が、希望ではないことを。そして長い長い追跡の果てに、運命さえも彼女に花のような、かくあるべき哀悼歌を捧げることはなかった。*1: 本当の花言葉は「離別」と「再会への願い」。*2: 聖遺物「審判の刻」、の記述より推測。*3: のセリフだと考えられる。関連項目:レティシア・ランドルフレティシアという少女は、ランドルフ家という貴族の長女として生まれた。彼女は、気品ある振る舞いと品位ある身だしなみを保ち、喜怒哀楽をあまり表に出してはいけないと教えられて育った。しかし、彼女は貴族である前に、一人の少女だったため、冒険に憧れていた。そこで、変装してサーンドル河に忍び込むことを思いついた。彼女はただ、自分の運命を握ることのできない卑小な人々の生活を見てみたかったのだ。それはパルジファルのマジックよりも面白いかもしれないと密かに色めきだった。しかし、彼女の冒険は期待と異なり、音楽、嘘、毒酒のような見えない危険が刃を光らせた。まさにその時、リードという顔見知りの若い男性(*)が現れ、救いの手を差し伸べた。リードは、レティシアの服装や歩き方から彼女の変装を見破った。リードは最も勢いと力のあるランドルフ家に取り入るため、レティシアに手を差し伸べた。レティシアはまんまと恋に落ちて結婚し、「ローズ」という偽名を名乗ってサーンドル河で暮らすようになった。幾年か経って再び父親に会ったとき、父親はランドルフ家に戻ってくるように望んだ。その後、父親とどのようなやり取りをしたのか不明で、リードは本当にレティシアを愛していたのかも不明で謎が多い。しかし少なくとも、リードはレティシアに、生まれてくる子供のためにサーンドル河を離れるように伝えたようだ。「僕のレティシア…子供たちのことを考えよう。新たに生まれる苗木のことを」「大砲の音が響く中、汚れた土や水で育てる訳にはいかない。」「まさか、怒りの涙と恨みの誓いで子供たちを育てようと——」「ただ不安な夢だけを子供たちに残し…先の見えない使命を引き継がせようと言うのかい。」*: リードについて確証のある情報は少ない。彼が「ボス」と呼ぶ人の言葉と類似した記述がに登場するため、エドワルド・ベイカーの部下だったのかもしれない。より貴族との付き合いがあり、表と裏を渡り歩く人物だったと考えられる。そのためランドルフ家とも親交があったのだろう。また、サーンドルの渡し守より、フルネームは「トンプソン・リード」だと考えられる。関連項目:1.7.3. 現在サーンドル河にはのフォンテーヌ廷拠点がある。かつて、棘薔薇の会の財務状況は今よりずっと良かったが、前会長のカーレスが決闘裁判で亡くなってから、資金繰りに困るようになった。組織では、モラルや法律に反する高い利益を得る商売が禁止されているため、資金の大半は支持者の援助で成り立っている。サーンドル河には、バーテンダーのテトロ―、のコンシリエーレ、組織の人間と思しきが居る。シュヴルーズの父ドナテッロが警察隊の規則を破り、重大事件の情報を漏えいした罪でに送られた際、シュヴルーズと母親はサーンドル河に転居した。体の弱い母親は、激変した暮らしの中で日に日に疲労の色を濃くしていった。母の面倒を見なければならないと思ったシュヴルーズは、幼い子供には不似合いな責任を迷わず背負うことにした。そして、サーンドル河のほの暗い流れの中に、自ら身を投じた。サーンドル河では多くの住民がシュヴルーズに救いの手を差し伸べた。親切な店主は彼女に仕事を与えてくれ、隣人夫婦は母親の面倒を見ると申し出てくれた。子供たちは、警察隊員の子がサーンドル河に来たと聞いて、まるで裁判官を見つけた原告や被告のように、未解決のもめ事の処理を彼女に丸投げした。「シュヴルーズ、絶対に正義を貫けよ!」子供たちは声を合わせてそう叫ぶと、一斉に大笑いした。皆、本気でシュヴルーズに善悪の判断をさせたいわけではなく、子供同士の単なる遊びのつもりだった。しかし翌日、シュヴルーズは分厚い法律の資料を抱えて子供たちの前にふたたび現れた。そして、けらけら笑う子供たちを前に、まっさらなノートの一ページ目を開き、まじめな口調でこう告げた。「それではまず、双方の証拠を提出してください。」こうしてサーンドル河の一員に、小さな法の執行者が加わった。しかし地上の法の執行者と異なっていたのは、シュヴルーズが自身の下した裁決の監督や執行までを、己一人で担当していた点だ。彼女はサーンドル河で様々な手段を学びつつ、「正義」を徹底的に貫く術を身につけたのだった。の期間中、という小説に似た手口の殺人事件が起こったとき、シュヴルーズはサーンドル河で聞き込みを行った。テトロ―の話によると、ある人が夜に酒を飲み過ぎて銃を失くしたが、三日後、酒場の隅でそれが見つかったという。その銃は、無傷で発砲の形跡もなかった。また、他の住民によると夜中に銃声のような大きな音がしたという。捜査を進めていると、南の水路のはずれで壊れた木の板にバラバラになった樽、酒瓶を見つけた。加えて、周辺には銃弾による焼痕もあった。事の経緯はこうだ。犯人は一丁の銃を拾って家に持ち帰り、分解によって銃の構造を理解したあとで元の場所に戻した。その後、自ら銃をこしらえ、それを持ってサーンドル河で射撃の練習を行った。さらに数日後、犯人はターゲットを定めて凶行に及び、小説のように一輪のレインボーローズを置いた。最終的に、捜査によって犯人は二銃士の著者の妹だと判明した。彼女の母親は、かつてある金持ちの男に殺されてしまい、その男への復讐のために犯行に及んだのだった。問題メリュジーヌと解決ロボサーンドル河には、サー・アーサー誘拐事件の容疑者が居た。彼はファデュイの一員である。彼はスチームバード新聞社の編集者ユンカーに、嘘発見器を制作した科学者モッソ・ランボロッソと、スチームバード新聞社の繋がりを示唆した。ボラールは、モッソ博士の研究基地を探しており、新聞社の内部情報を聞き出すためにユンカーと連絡を取った。ボラールは、見返りを求めてユンカーへ「エレガント食器商会」という詐欺集団の詳しい犯罪の情報を伝えたが、ユンカーから見返りの情報は無かった。ボラールは自らの力で内部情報を得るために、新聞社に忍び込もうとした。しかし、情報は得られず事件の容疑者として疑われてしまった。関連項目:ユーサーの工房サーンドル河にはユーサーの工房がある。ユーサーはの創業当時の経営パートナーだ。千織がに来たばかりの頃、お互いにデザイナーとしてファッションの舞台に憧れていた。その共通の目標に向かって、一時期協力していた。伝統に囚われず、他人とは一線を画したデザインで、人々の目を奪うような服を作るのが二人の夢だった。しかし、周りからの不評を耳にし、投資家たちに首を横に振られるたび、ユーサーは自信を失っていった。そしてファッションウィークの前夜、彼は理想の服を作ることは無理だと結論づけ、千織と決裂した。千織は一か八かの覚悟で、すべてを賭けて臨んだ。最後の日にやっと納得のいく服を仕上げて、不安を抱えながら、ファッションショーに赴いた。その結果、千織は一躍有名になり、ユーサーは毎年のようにちょっかいをかけてくるようになった。旅人達と出会って初めてのファッションウィークで、ユーサーは千織屋が犯罪者と関係を持っているというデマを流した。千織はまずファッションショーで正々堂々と勝負してから、デマに反撃するという二段構えの作戦を取った。工房が稼働していない日に、旅人とパイモンと千織はユーサーの工房の「見学」に向かった。工房の奥で、ユーサーが汚い手口で経営している証拠をつかんだ。そして千織はユーサーと対峙し、直々に懲らしめた。その後、証拠をに渡し、スチームバード新聞にて真相の掲載が決まった。また、ユーサーは縄で縛られ、達に引き渡されたようだ。2. ポート・マルコット2.1. 概要ポート・マルコットはフォンテーヌ廷とエリニュス島を繋ぐナヴィア線の駅だ。ここには大小さまざまな噴水があり、その中の一つに、三体のライオンのような彫像が設置されたものがある。この彫像にを入れることで、噴水の中央にある扉が開き、エリニュスの根と繋がる通路を通ることができる。関連項目:2.2. 泉は再び湧きいづるある日、レモディエールという男が、両親から妹のケラトリーの面倒を見るように頼まれた。両親は歌劇場にオペラを見に行くそうだ。兄妹二人で噴水近くまで遊びに来たとき、ケラトリーがここで両親を待って一緒に帰ると言って駄々をこねた。レモディエールは、ケラトリーの機嫌を取るために噴水を止めるマジックが出来ると嘘をついて、水が噴き出すタイミングを見計らって無事に騙した。ケラトリーの機嫌はよくなり、一緒に家に帰って寝ることにした。しかし、翌日レモディエールが噴水を訪れると、水が止まったままだと気づいた。ケラトリーは両親にマジックのことを話してしまったため、両親が噴水の故障を知るとレモディエールの仕業だと疑うだろう。レモディエールは噴水を管理しているエデルに修理を頼んだが、なかなか直してくれなかった。そこで、旅人とパイモンに助けを頼んだ。旅人たちは、エデルが早く噴水を直せるように必要な部品を集めた。エデルとの協力により、無事に噴水から水が流れるようになった。2.3. 危険だらけのフォンテーヌ廷ある日、旅人とパイモンはここで不審な態度の女性と出会った。彼女に話しかけると、旅人が暴力を振るうかもしれないといった妄想を口にして怯えた。落ち着かせて話を聞くと、彼女は探偵小説の構想を練っており、犯人の手口を考えているうちに、被害妄想に憑りつかれてしまったそうだ。巡水船に乗って街までコーヒーを飲みに行こうとしても、船内で事件が起こるシーンが頭に浮かび、船に乗れないという。旅人がフォンテーヌ廷のカフェ・リュテスまで送ってあげると、コーヒーに毒が盛られているかもしれないと疑いはじめた。店内で不穏なことを言うギハーロに対して、店主のアルエが警告に来ると、ギハーロは謝罪を兼ねて追加の三杯を注文した。ギハーロは最後に、多くのトリックのアイデアが得られて満足した旨を告げた。その後しばらくたって翹英荘で彼女と再会すると、「危険だらけのフォンテーヌ廷」というタイトルで小説を書きあげ、あとは印刷と出版を待つだけだそうだ。気弱な探偵と恐れ知らずの妹兼助手、無数の犯罪者の罪の証拠を集めた「犯罪博物館」…失踪した双子、むせび泣く機械人形、噴水で溺死した博物館の館長…容疑者はわずか三歳の子供…このような内容らしい。発売したら、旅人とパイモンにサイン本をプレゼントしてくれるそうだ。関連項目:3. ルキナの泉3.1. 概要ルキナの泉はのすべての水が交わる場所だ。フォンテーヌの新婚夫婦は皆、ここで子宝祈願をする。泉に願い事をこめたコインを投げる風習があるが、冒険で獲得したを泉に投げ入れることこそ、願い事をする正しい方法であり、この風習の本当の由来でもある。伝説によると、は先代水神が最初に流した涙から誕生したという。純水精霊がその数を増やす方法については、純水精霊の間に代々伝わる秘密であり、複数の説がある。一説によると、知識や感情を十分理解、蓄積した段階で、水神か族長の許しを得て、「これ」を授かり、自分を分裂させて新たな純水精霊の子を生み出すという。「これ」についても諸説あり、ある者は純粋な一滴の水だと主張する。またある者は、言葉や名前、呪文かもしれないという。さらにある者は、それは許しの言葉だという。エゲリアが原始胎海の力を使って純水精霊を疑似的人類に変えた後、ルキナの泉で祝福を受けた純水精霊たちは、数ヶ月後に新たなフォンテーヌ人として生まれてくるようになった。これらの儀式は、風習として今も受け継がれている。また、が古龍の権能を駆使し、フォンテーヌ人に真の血液を与えてからは、彼らは真の人類に変わった。3.2. ヴァシェとヴェニール人々の涙には、悲しさ、嬉しさ、恐怖などの強烈な感情が含まれている。水元素の感知力が強い者は涙の強烈な感情を感じ取ることが出来る。また、ルキナの泉はのすべての水が交わる場所なので、沈殿している数多くの記憶と感情を感じ取ったり、と意識を繋げることができる。そのため、魔神任務第五章第四幕では、旅人はの涙に触れて心の世界に入ることができた。また、それより前にも、ルキナの泉で純水精霊の姿をした者がヴァシェの名を呼ぶ声を聞いた。彼女はヴァシェの恋人ヴェニールと深い関わりがある者で、旅人に「ヴァシェに私を探さないように伝えてくれ」と頼んだ。ヴァシェは、ヴェニールが不慮の事故で原始胎海の水に溶けてしまった後、愛する人を取り戻したい一心で多くの女性を溶かした。これはフォンテーヌで連続少女失踪事件と呼ばれている。ヴェニールが溶けて二十年以上が経ち、旅人たちは連続少女失踪事件を解決した。最後に旅人は、ルキナの泉でヴェニールと話せると伝えたが、彼女の意識の全てがヴァシェを遠ざけていた。彼女は、私欲のままに若い命を奪ったヴァシェに対して強く失望していたのだ。最終的に、溶かされた女性たちの意識がヴァシェを襲い、彼は極度のショックで死んでしまった。3.3. 氷風組曲3.3.1. 「コッペリアの葬送」と「コペリウスの劫罰」ルキナの泉の近くで、氷風組曲に挑戦出来る。の上級研究員ボシュエの最初の構想では、奇械ダンサーは機械的な複製の時代を超えた芸術品だった。ボシュエの退任後、マイヤルデが同プロジェクトを引き継いだ。彼はオートマタと踊り子に対して独自の見解を持っていたため、世代を経るうちに奇械ダンサーは各機能の完成度が高まると同時に、ボシュエの設計の初心から徐々に逸脱していった。彼がプネウムシアに関する知識も少し加えた影響で、踊りに特化しているだけでなく、戦闘面においても遜色がなくなった。ウーシアとプネウマ属性の区別に基づいて、コッペリアとコペリウスに二種類の戦闘モードを開発した。その二つが「コッペリアの葬送」と「コペリウスの劫罰」である。関連項目:3.3.2. クロックワークコッペリア氷風組曲は、劇場でたった一度、数幕のみ上演された劇「クロックワークコッペリア」からインスピレーションを得ている。所謂「人の心」を持つクロックワーク・マシナリーのコッペリアと恋に落ちる発明家グロリアの物語を描いたこの劇は、上演前から評論家や文芸家の間で注目を集めていたが、上演初日、最初の幕間に、世界各地に深い傷跡を残した災難が起きた。したがって、クロックワークコッペリアの脚本は公開も出版もされていない。ただ、当時のグロリア劇場の生存者のうち、一部の観客が記憶に基づいて幕間の休憩までのあらすじと台本を書き写した。残っているストーリーの一部には、このようなものがある。コペリウスの計画がファントムハンターに露見し、劫罰を受ける前にコッペリアに最後の別れを告げる。コペリウスは、コッペリアに最後にもう一度歌を聞かせてほしいと頼む。私の心に絹糸を巻きつけ、それで私をしっかり縛り、首かせをはめるのだ。君の見ている前で、破滅を迎えさせておくれ。私の心は決まっている。だから、これからは私を喜ばせてくれる人を探すのではなく、私が選んだ人に喜びをもたらしたい。残っている別のストーリーに、このようなものがある。コッペリアは同行していた青年に旅に出た真意を打ち明けると、彼女の目の前で亡くなった創造者の後を追うことを決意した。彼女は、自身の錆びた歯車が消えてしまえば、一切の罪が忘れられると信じている。私はもう陽や月や星を見る必要はありません。林の中を飛び回る鳥の歌を聞く必要はありません。この心臓を与えてくれた人が去った世で、なお鼓動を続ける必要はありません。関連項目:3.4. 三人寄れば…明師を探せ旅人は、と(恐らく従業員の)弈豊、興曄の一行とルキナの泉付近で出会った。彼らはのからやって来た。村での茶葉の生産は競争が激しく、勝つことができないため、彼女らは茶葉商人のために宣伝用映影を撮影している。撮影は「結構稼げる」とのことだが、すぐに村に同業者が現れた。彼らの中には、映影に歌を入れるなどの工夫をする者もいた。そこで、邱社長たちは対抗するためにの専門家にアドバイスを求めてやって来た。一行は、光と影を使った叙述表現が上手な映影専門家のガイサートを見つけた。彼の理論は、今のフォンテーヌ映影業界では重視されていないが、邱社長は興味を持った。しかし、彼に教えを請うためのサンプルを撮影していたところ、トラブルに見舞われてしまった。まだ撮影が始まって間もない頃に映影機を失くしたり、フィルムを入れた箱を水に落としてしまったのだ。旅人の助けで映影機とフィルムを無事に回収し、ガイサートから指導を受けることができた。その後、彼女たちは、に学習成果を検証しに戻った。4. エピクレシス歌劇場4.1. 概要エピクレシス歌劇場はエリニュス島の一番大きな建物で、通称「歌劇場」と呼ばれる。歌劇場は様々な文学や芸術に関する公演を開催するだけでなく、もう一つ大事な役目がある。それは法廷として、で起きた全ての事件の審判を見届けることだ。第一次大水期以来、エピクレシス歌劇場は祝聖の地とされるエリニュス島の高所に立ち、あらゆる水の頂点にそびえ立つ都を見下ろす。それもまた、新時代の律政と正義を示している。4.2. 歌劇場にはという巨大な機械がある。これは、神が創造した最も公正な審判マシナリーだ。水神は神の心を持ったまま、諭示裁定カーディナルと一つになった。そして、法廷で審判が行われる時、人々の正義に対する信仰を集め、それをエネルギーに転換して生まれるエネルギーを五百年間集め続けた。集まったエネルギーは、の民が何千年も何万年も使えるほどの物となった。諭示機による判決は最高審判官による判決と同様に重要で、公平性の二重保険となっている。表向きはそうなっていたが、諭示機の本当の役目は別にあった。旅人たちがを告発したとき、『「水神」、有罪……死刑。』という判決が下った。諭示機と集め続けた律償混合エネルギーの真の目的は、正義の神をもろとも破壊するというものだった。フォカロルスは、このような膨大なエネルギーをもってして初めて、天空の島が定めたルールを揺るがし、俗世の七執政の構造を壊し、水神の神座を破壊するための隙が生まれると考えた。こうしてフォカロルスは逝去し、それと共に諭示裁定カーディナルも止まった。現在、審判を下す役割はヌヴィレットのみが担っている。4.3. 水の龍王にはかつて水の龍王がいた。その水龍が涙を流すと、空から雨が降るという伝説がある。雨が止んでほしかったら、空に向かってこう叫べばいいという。「水龍——水龍——泣かないで——」悲劇的な審判の日には、晴れた空から突然雨が降り出すことがある。それは、水龍が涙を流しているのかもしれない。4.4. 歌劇場のルール関連法律の規定に基づき、観客の快適な鑑賞体験のため、エピクレシス歌劇場では会場内への飲食物の持ち込みは禁止されている。違反した場合、執律庭より退場勧告および処罰が執行され、状況が深刻な場合は裁判にかけられ、有罪判決を受ける場合がある。また、入場の際はドレスコードが適用される。ドレスコードを満たさない服装の場合、スタッフにより入場を拒否される場合がある。エピクレシス歌劇場へは予約後にチケットを受け取り、入場する。チケットには座席番号が記載されている。4.5. 公演と審判歌劇場では様々な公演と審判が行われる。公演の中には次のようなものがある。一つ目は、アウレリウス戦記を改編した「アウレリウス」シリーズ舞台劇三部作。二つ目は、メリュジーヌ・フィルハーモニー・オーケストラによるコンサート。演目は「エリナス叙情詩」より抜粋、および「裁判官への礼賛」より抜粋。このオーケストラはで好評の楽団であり、団員は全員で構成されている。三つ目は人気マジシャンによるマジックショー「大魔術師のファンタジーナイト」。このショーでは新作マジック「水槽脱出」も公開予定らしい。さらに、歌劇場では「ラヴェール賞授賞式典」も開催される。ラヴェール賞は、スチームバード新聞が出資して創設したもので、フォンテーヌ廷の記者たちが最も価値を置く賞だ。他にも、旅人に馴染み深いものとして、マジシャンのリネの審判、連続少女失踪事件の審判、がメリュジーヌの姿から人の姿に転化したことの審判、亡くなった友人のために復讐をした特巡隊隊長のヴォートランの審判などが行われた。4.6. 迷子の人形ある日、マジシャンの助手は、劇「迷子の人形」の主演を務めた。初演の成功の裏、リネットは一瞬だけ敵意に満ちた視線を感じた。さらにその後、彼女は脅迫状を受け取った。当初、この劇は別の女優ジリアンが主演となる予定だったが、メリエ監督は急遽リネットを起用した。旅人とリネットの調査によって、脅迫状の差出人はジリアンの妹ジーナだと判明した。ジーナは、誰よりも慕っている姉で、かつ最も憧れている役者に、ついに巡って来た主演のチャンスを素人同然のリネットに奪われたことに腹を立てたのだ。しかし、脅迫状の主と、舞台で敵意の視線を送った主は別人で、視線の主はメリエ監督だと分かった。リネットが主演になることで多額の興行収入が見込める半面、リネットの演技力に見合うように劇の台本を書き換え、簡素化する必要があったためだ。この真実を知ったリネットは、ジリアンと劇団員を説得し、元の台本でジリアンが主演を演じるように仕向けた。公演が始まったが、ジリアンは仮面を被っていたため、入れ替わりに気づく観客は居なかった。劇が終わって仮面を外して正体が明らかになったが、誰もがジリアンの演技に夢中で、入れ替わりについて責める者は居なかった。4.7. トゥローザの手紙歌劇場からそう遠くないところに、「離別」と「再会への願い」の花言葉を持つと、のが嘘発見器に残した手紙がある。カーブを制作したモッソ博士は、嘘を理解し、人間を理解することで人間になれる——そんなロボットを作ろうとした。モッソ博士は三十年前にカーブを守るために決闘裁判で亡くなった。その後トゥローザはの物証管理室でカーブを見つけ、モッソ博士の目的を手伝いたいと考えた。最終的にカーブはトゥローザ達を守るために自ら嘘をつき、モッソ博士の目的は達成された。手紙の中で、トゥローザは友人の嘘を叱責しながらも、感謝の気持ちと、カーブが居なくなったことへの寂しさを伝えた。とはいえ、あたしはモッソ博士のあの言葉を、それほど正しいとは思えないわ。えっと、何だったかしら?——「人と人が作る二つの点の間では、曲線こそが最も短い」。だって…きっと時には、拳を真っ直ぐ突き出すことも必要でしょう?例えば今、あたしがあなたを懐かしんでいるように。関連項目:5. 希望の道ある日、のエンジニアが海洋生物を観察していると、制御不能となったエイ型クロックワーク・マシナリーの元で幼体のを救い出した。検査の結果、普通のプクプク獣より弱く、元の環境での生存確率は20%以下だと分かった。そこで彼は、希望の道にある観察所で飼うことにして、「ウーウーブドウ」と名付けた。その後、彼のプロジェクトの経費が撤回され、「クロックワーク・マシナリーを用いてじゃんけん対局シミュレーションをするための革新的な回路設計及びその社会学的な影響に関する研究」に予算が回されることが決定し、彼は地上に戻らなくてはならなくなった。ウーウーブドウを陸に連れて帰ることが出来なかったため、十分健康に育つ程度の餌を置いて地上に戻っていった。パイモンはエンジニアのメモを見て、旅人にウーウーブドウの様子を見に行くように提案した。会いに行くと、ウーウーブドウは残した餌をとっくに食べ終えて、お腹が空きすぎて息も絶え絶えになっていた。旅人が魚肉を与えると、警戒して躊躇いがちであったが、途中からはがつがつと全部平らげた。それから定期的に餌を与えたり、閉じ込められた友達を助けてあげたり、近くのマシナリーを追い払ったりするうちに、旅人になついた。しばらくすると、小さかったウーウーブドウは成長して大きくなり、パイモンは「ウーウー大ブドウ」と呼んだ。すっかり元気になったウーウー大ブドウは、観察所を離れて友達たちと一緒に暮らせるようになった。6. 安眠の地6.1. 概要花の咲き誇るエスス山麓の芝生は、そよ風に撫でられ、風車もグルグルと回っている。静かで穏やかな雰囲気の中、思わず素敵な思い出に浸ってしまう。古い記録によると、ここにはかつて花の名を冠した壮大な殿堂があり、あらゆる水の上で、捨てられた孤児を育て、愛の教えを唱えて祈ったという(後述の水仙十字院のことだと考えられる)。往日の高塔はもうそこにはないが、花々は今も変わらず香っている。6.2. 水仙十字院四百年以上前の災厄が起こる前、安眠の地にはがあった。水仙十字院はかつて存在した孤児院で、前世代の文明(文明だと考えられる)の遺跡に位置する。が孤児と犯罪者の子供のための養護施設を正式に公共の福祉システムとして導入することを決定して設立され、名前は前世代の文明にちなんだものとされている。前代水神の仁政への感謝と共に、院長と副院長の職位が設けられた。院長として、大人しい性格のが任命された。副院長は品格と高い実行力を持ち合わせたが任命された。院の立地は太陽と月の光が届かない場所とされているが、暖かく、子どもたちの活気に溢れる場所であった。関連項目:6.3. 水仙十字院の崩壊災厄の少し前、は子供たちにプリンセス・リリスと悪龍ナルキッソスのおとぎ話を作って聞かせた。災厄が起こると、は著しく損壊し、廃墟となってしまった。この時期にバザル・エルトンは艦隊を率いて巨獣との戦いに赴いた。は知能が高くなかったため、災害と避難した孤児たち、そして自身の行いの関係が理解できず、自責の念と期待に苛まれながら廃墟の中を彷徨った。当時の子供たちはや特巡隊に引き取られたり、世界の果てを見届ける冒険へと旅立ったり、散り散りとなった。バザル・エルトンは遠征先で命を落とし、リリスはの一員となった。6.4. 「マリアン」それから時が経ち、のルネ、達が巨獣を活性化させようとしたとき、の達の間で激しい戦いが繰り広げられた。最後に大きな爆発が起こり、マリアン・ギヨタンは瀕死の重傷を負ってしまう。リリスはを救うために、彼女を抱き締めて自身の意志と統合した。そして、統合された二人の意志は、新たなとなった。6.5. アンある日、が夢の中で見たキャラクターからが誕生した。はとの意識が融合しているため、そのが創造したもまた、二人の意識と人格の影響を受けている。したがって、の世界は、でがに語った悪龍ナルキッソスのおとぎ話が元になっている。は、自分の人生の目的は、プリンセス・リリスを悪龍ナルキッソスから救うことだと信じていた。6.6. 船尾が描く波ある日、は通りすがりの旅人とパイモンに助けを求めた。プリンセス・リリスを助けるために、安眠の地に辿り着いた。旅人達が冒険の末、を手にし、さらに歩みを進めると絵本を発見した。旅人が絵本を詳しく読もうとすると、真の安眠の地にワープした。は「ずっと過去の夢に浸っていたい」と考えており、この地でずっと過ごしていた。はに対して、自分の運命を握り、自分だけの願いを持って生きてほしいと伝えた。の出自については何も答えず、はと旅人を追い出し、中に入れないようにした。最終的にとの謎が解けた後、はアンとして、は「マリアン」として、一緒に世界を見る旅に出ることを決意した。7. 自然哲学学院7.1. 概要希望の道の近くの水中に、廃墟となった建物がある。これはもともとという施設で、かつてに存在した研究施設だ。学院の学院長(*1)はエマニュエル・ギヨタン、カール・インゴルド、の古い友人のドワイト・ラスク(*2)だと考えられる。*1: 自然哲学学院の「古い記事」からエマニュエルとバザルの旧友が学院長であると推測できる。*2: 聖遺物「忘却の容器」より、エマニュエル、バザル、カール、ドワイトという四人が旧友であることが分かる。また、聖遺物「老兵の容貌器」より、バザル、ラスク、インゴルド、ギヨタンという四人が旧友であることが分かる。二つの記述を組み合わせると、ドワイト・ラスクという名前が推測できる。関連項目:7.2. 動力学の研究学院では動力学などの分野が研究されており、特に四百年以上前の当時のでは、マシナリーの有意義な発展のためには動力の障害を克服する必要があると考えられていた。の砂漠の遺跡で発見されたプライマルメカと当時のクロックワークを比較し、顕著な技術レベルの差があることがわかった。これらの徹底的な調査のため、やっとのことで実験室に運んで分解調査を行った。学院の若き天才はフォンテーヌの大気や水中、生物の体内に遥か昔から宿る地域特有の「ウーシア」と「プネウマ」の特性に着目した。最終的に、彼はウーシアとプネウマが起こす「プネウムシア対消滅」が発生した際のエネルギーを利用する動力コアの開発を成功させた。7.3. 機械運動学の研究その後、の研究対象は機械運動学に移った。新しい実験室では、のなどを研究した。しかし、実験中に機械の暴走がたびたび起こり、危険だと判断されたため被害を防ぐ緊急対応策が考えられた。その後、彼は犬のマシンを作って運動学や材料学の分野で得た成果を検証した。この犬のマシンは、アランの助手カーターの提案で作っただと考えられる。カーターは、アランが研究に没頭している間に大切な妹の写真を撮れるように、思考能力を備えた写真機の製造を提案していた。アランは、その目的についてはともかくとして、警備や偵察の役に立つと考えた。こうしてプロトタイプ4ACV07、通称セイモアが設計された。セイモアはマリアンのお供と護衛を目的に、の最先端の光学設備を搭載して作られた。7.4. ルネとジェイコブの研究の研究の一方で、ルネ及び当時まだ幼かったは研究の方向性が異なっており、学院長は彼らに新しい実験室を用意した。その研究内容は危険だったため、実験室への出入りは制限された。ルネは研究の中で、災厄の後に現れた「すごいもの」を複数入手した。これらは一般人にとっては危険だが、ジェイコブには害を及ぼさなかった。彼らの実験は最終的に、命を救うためとはいえ、カーターに悲惨な結果をもたらすことになった。7.5. 水仙十字結社との関係学院の中心エリアにはへと続く本が置かれている。これを閲覧すると、のイプシシマスの塔へとワープできる。水仙十字結社の創始者のルネは、学院の人が信者のようになる姿を見て哀れに感じつつも、組織と帰属意識を与えるために学会という名目で水仙十字結社を設立した。結社の怪しい活動に疑念を抱く者も居たが、明らかな攻撃性や侵略性は感じられないと判断され、正規ルートで立件や調査は行われなかった。の解散後、サー・エーリッヒ・███はの招待で水仙十字結社に加入した。彼は著名な歴史学者で、結社ではの文明の研究に身を捧げた。彼の指摘から、自然哲学学院に保存されている古代の写本を見つけ、難航していた原初の銅板と石碑などレムリア文字で書かれた文書の解読が進んだ。7.6. 十字鈴蘭学会ある日、旅人とパイモンはフォンテーヌ廷で(*)と出会った。彼は旅人に「十字鈴蘭学会」の遺した秘宝の探索を依頼し、見つけた富を、ロシを掌握するために利用しようとした。ヴァージルと旅人達が共に探索した十字鈴蘭学会と噂されていた場所が、実際はの廃墟だと分かった途端に、ヴァージルは旅人達を始末してモラを奪おうとした。旅人たちはうまく逃げ出し、後日ヴァージルを探していたの白手袋と漁師と出会う。彼らと共にヴァージルの場所を見つけ出し、そこで手下たちとロシの積荷を発見した。戦闘に勝利し、旅人達が離れた後ソニィはじっくりと「お話」をして、ヴァージルのそれ以降の消息は分からない。*: ソニィとの会話より、棘薔薇の会のメンバーか、少なくとも関わりのある人物だと推測できる。8. サラシア海原8.1. 蒼白の遺栄海を縦横無尽に駆け巡った「白い艦隊」はの栄光であった。なぜなら、あらゆる水を征服することは、まさに河川と海洋の女主人が人々に授けた権力と祝福だったからだ。しかし、遥か遠い憧れは到底運命の法則には叶わない。四百年以上前、白い艦隊は巨獣との戦いで敗れてしまった。水中に沈んだ船の黄銅の帆柱には、今でも「四海の潮波を征服せり」という言葉が刻まれている。関連項目:8.2. 異界の余影かつて星の羊水を吞み込んでいたは、この世から跡形もなく去っていった。しかし、滅亡の予兆の残影は、事情を知る者の心に永遠にのしかかるだろう。悪戦の際に砕かれた時空の欠片が、ここに落ちているようだ。それを通して巨獣の影像を再び目撃できるかもしれない。8.3. 原始胎海と「ロシ」サラシア海原の水中には、原始胎海の水を薄めて作られたロシの製造場所がある。かつて、ヴァシェとヴェニールという人物が恋に落ちた。ヴァシェはスネージナヤ出身の冒険者で、ヴェニールと行動を共にしていた。とある水中での探索で、ヴェニールは原始胎海の水に触れ、ヴァシェの目の前で溶けてしまった。彼はヴェニールの死に打ちのめされ、絶望の中でヴェニールを連れ戻す方法を探したある日、の一員が残した原始胎海の研究結果を見つけ、これをもとに実験を開始した。それからは女性を拉致し、ヴェニールを元に戻そうと研究に明け暮れた。犯罪者の身分を隠すため、彼はという偽名を名乗り、ポワソン町で商売を始めた。マーセルという名は、ヴェニールとの間の子につけようとしていた名前である。マーセルは研究の過程で、希釈された原始胎海の水には人を高揚させる効果があると気づいた。そこで、これに「ロシ」と名付けて製造と密売を始めた。ロシは一見ただの飲み物だが、飲むと気分が高揚して愉快な幻覚がたくさん見えるようになる。長期的にそれを飲むと、集中力の低下や情緒が不安定になるといった副作用が出てしまう。逆に飲むのをやめれば、倦怠感が一日中続いて、理由もなく焦燥感を覚えるようになる。その後、マーセルはポワソン町でカブリエール商会の会長となった。彼らは最初は「せどり」のみで商売をしていたが、今やその潤沢な資金により、都市部にまで手をひろげている。三年前、当時ポワソン町を管理していたの会長カーレスは、ロシを全面的に禁止した。そして、ロシの製造者を特定し根本からこの問題を解決しようとした。カーレスは調査の中で、ロシと連続少女失踪事件の関連性に気づいた。カーレスはとても珍しい病気で余命五年足らずと言われていたため、自身では調査を完了できないと判断し、マルシラックにロシの製造場所を伝えた。三年後、カーレスの娘がこの調査を引き継いだ。旅人とパイモンはロシの製造場所で証拠を発見し、マーセルの有罪を証明した。その後、市場に出回っていたロシはすべて回収された。9. タラッタ海底谷タラッタ海底谷はフォンテーヌ廷の北東にある水域である。近くの釣り場に、フォンテーヌ釣り協会の理事が居る。彼女は理事であるにも関わらず、一度も魚を釣り上げたことがなかった。彼女は元々のごく普通の事務員で、機材を購入したり、取引先と値段交渉を担当していた。ほとんどの時間、取引先からの返事を待つだけで、その間は街をぶらぶらするしかなかったが、幸いにも街で釣り協会の友人たちと出会うことができた。友人たちのおかげで、釣りの面白さに夢中になり、人生の進むべき新たな道を見つけた。そのお返しとして、科学院で放置されていた道具をたくさん彼らに提供した。協会のメンバーたちにとって、その装備は大いに役立つものだった。彼らはデラロッシュの功績を称えると同時に、釣り協会の理事に推薦した。デラロッシュは商人とのやり取りに詳しく、呼ばれたらすぐに駆け付けれるからだ。しかし、未だにデラロッシュは指一本分の大きさの魚ですら釣り上げることができないままだった。旅人とパイモンがその理由を探ってみると、彼女は水にあまりに溶けやすい餌を使用してしまっていた。旅人の助けで、念願の魚を釣り上げることが出来た。旅人は、その後も何度かデラロッシュが魚を釣れるように助けてあげた。ある日、デラロッシュはメリュジーヌのイアーラと出会い、釣りのテクニックを教え、釣り竿をプレゼントした。イアーラはその釣竿を使って、メリュシー村でマンマルタコを相手に釣りの練習をした。10. その他10.1. 偽造ロシタラッタ海底谷の西側の海辺に、ロシが市場から消えた後に現れた「偽造ロシ」の製造拠点があった。のピエールは、偽造ロシを作り、ペットを使って偽装工作をして、海の向こうに運んだ。この密輸事件は、特巡隊隊長との調査によって解決した。10.2. 深潮の余韻偽造ロシの製造拠点の近くにの遺跡と思しき秘境「深潮の余韻」がある。遥か昔、が幽閉されていた頃、は音楽を通し、海の上に栄光の帝国を築こうと夢見ていた。だが、彼の空想のような偉大な願いは失敗に終わり、人の子の野心と誇り、それらと共に水に深く沈んだ。黄金の如き楽章には沈黙が訪れ、孤独な潮の音だけが、残された祭壇に響き続ける。10.3. エスス山麓の追憶フォンテーヌ廷の北に、自称フォンテーヌ芸術界の未来を担う大芸術家のと旅人が出会った場所がある。サルサはここの綺麗な景色をキャンバスに描こうとしたが、冒険者たちが景観を損なう物体を置いたせいで憤慨していた。彼女は、景色を台無しにする冒険者協会に対抗するために「邪悪な組織を打ち倒してフォンテーヌの未来を守る芸術家同盟」を設立した。後に、置かれていた物体は、冒険者兼インスタレーション芸術家のウーブの作品だと分かった。サルサはウーブの芸術を認めず、彼が置いた物体を景観に合うように配置を変更した。二人の芸術家の意見は合わなかったが、ウーブは旅人とパイモンに言い負かされて、捨て台詞を吐いて去っていった。10.4. ラノールとアーンショウフォンテーヌ廷の北西、そよ風が吹く山の麓にの家がある。彼はここで「勇者」、「姫」、「王子」という犬たちと暮らしている。アーンショウの娘のアグネスは、何年も前にこの家を出て里帰りもしないという。アグネスは何度か手紙を送ったが、アーンショウは直接謝りに帰ってくるのを待っており、封を開けずに放っておいた。アグネスは出て行ったあと、何らかの理由でに送られてしまった。そしてメロピデ要塞でアグネスは娘を出産し、と名付けた。アグネスにとって、ラノールは日差しも雨も当たらぬ場所でも一人逞しく育つ、岩の隙間に咲いた小さな花だった。しばらくして、アグネスは病気で亡くなってしまった。旅人とパイモンはと協力してラノールをメロピデ要塞から連れ出し、祖父アーンショウの元に案内した。その後、キャタピラーがヒルチャールの姿でラノールを訪ねると、アーンショウは孫娘を心配して執律庭に通報した。キャタピラーは人の姿に戻れなくなっていたため、ラノールに別れを告げ、そのまま姿を消した。10.5. ポトン(ラワット)の家から少し坂を上った先に、のポトンの母親の住まいがある。ポトンは自身の醜い容姿のせいで、世界から悪意を感じ続けていた。あるとき、彼は顔を変えられる変貌薬を作ることに成功した。作り方は、犯罪組織の手伝いでロシを調合していた際に偶然発見した。薬の主成分は、フォンテーヌ人が原始胎海に溶けた後に残る液体で、ヴァシェの組織から仕入れていた。そして、ポトンはこの薬を使って整った顔立ちに変わり、と名乗るようになった。彼の母親は重い病気にかかっており、病状は悪くなる一方だった。治療のために高い薬を買っても効果は無かった。せめて最後に息子の顔を見せようと、再びポトンの姿に戻ったが、母親は視力を失っており、最後まで息子のことが分からないまま亡くなった。同席していたは、ポトンと母親にこう告げた。今この時、キミのことを思い出すのに一番役立たないのが外見。でも、家族に自分のことを思い出させる方法は、他にもたくさんあるでしょ?どうやら、その手ひらのぬくもりはもう変わってしまったようね…ごめんね、結局彼を連れてきてあげられなかった。
背景知識
1. 冒険者と調査員と猫ある日、はフォンテーヌ廷で猫を見つけ、バーニーと名付けた。彼女はスチームバード新聞社に行って迷子猫の案内を出した。すると男性と女性が案内を見てやってきた。男性はバーニーのお腹を調べて自分の猫ではないと判断し、女性は友人の猫だと主張した。リネットは女性のいくつかの仕草から警察隊の隊員ではないかと疑い、問い詰めた。予想通り彼女は警察隊の一員で、名はエロルディだと名乗った。彼女はとある密輸事件の追跡をしており、バーニーの飼い主が重要容疑者だと語った。先日容疑者が行方をくらまし、猫はその時にはぐれたのだろう。エロルディは、容疑者が飼い猫のために姿を現すことを期待して、リネットを訪ねた。エロルディによると、容疑者はの研究員で、名前はピエール・ルフェーブルだ。ルフェーブル家は、悪事を働いていた悪名高い貴族の家系である。リネットがファデュイとに関わる前、彼女はルフェーブル家に贈り物として渡されそうになった。しかし、一族の当主と主要人物がに暗殺され、勢力が一気に衰えた。生き残った者はその名を隠して暮らしている。ピエールはそのうちの一人で、姓と身分を偽ってフォンテーヌ科学院に閉じこもっていた。がポワソン町で彼にあったとき、彼のペンダントの紋章がルフェーブル家のを示すものだと気づいた。エロルディの追っていた事件は、新型の違法薬物「偽造ロシ」の密輸だった。警察隊は、これまで市場に出回っていたロシをすべて回収したが、人の心の空洞は、一日や二日で埋められるものではない。犯人は、この心の隙を狙って偽造ロシを開発した。犯人は警察隊の警戒をかいくぐるために販路を外国に移し、偽造ロシの密輸を始めた。マレショーセ・ファントムが、相応の製薬能力を持つあらゆる人を調査し、ピエールに辿り着いた。エロルディは、バーニーを警察隊に連れていくと、ピエールがいくら図太くてもバーニーを連れ戻すために、警察隊に近づこうとはしないだろうと考えた。そこで、バーニーをリネットと旅人のそばに置いておくことにした。リネットはエロルディからピエールの話を聞いて、何かおかしいと感じたため、フォンテーヌ科学院にピエールのことを調べに行くことにした。科学院で、兄のと特巡隊隊長と出会った。リネットの推測通り、ここ数日不審な行動をとっていた兄は、シュヴルーズと共にピエールを調査していた。旅人とリネットは、二人の捜査に合流することになった。これまでの二人の捜査によると、ピエールはかつてロシに溺れており、科学院の実験材料を使って、薬性の似た物質を模造しようとしていたという。研究のためだと弁明したが、科学院から自宅謹慎を命じられ、関連材料に近づくことも禁じられた。次の処分を待っていたが、科学院は人員不足のため、正式な処分が棚上げにされていた。バーニーの助けによって、タラッタ海底谷付近の海岸に偽造ロシの製造拠点があると判明し、調査を進めた。集めた証拠から、樽とフロートを利用したことと、共犯者がいることを推理した。仮にピエールが製造だけを担っているとすると、輸送と密輸を担当する人物が必要となる。共犯者を見つけるため、リネットと旅人はルミドゥースハーバーの運航記録を調べに行くことにした。港につくと、エロルディがここで警備を担当していることが分かった。エロルディから運航記録を受け取って確認すると、海外向けのペットビジネスを行っている「愛心社」の名が頻繁に登場していた。愛心社のベノワ社長は、迷子猫の案内を見てリネットを訪問した男性であった。リネットは、愛心社が動物を使って偽造ロシを運んでいることを突き止めた。ピエールは、偽造ロシを密封パックに入れて動物に飲ませ、動物を運ぶために吸気口の空いた樽を利用していた。ベノワがリネットと会った際にバーニーのお腹を調べた理由は、バーニーが偽造ロシを持っていないことを確認するためだったのだ。リネット、旅人、エロルディは、フォンテーヌ廷の愛心社の本社近くでベノワを捕らえた。ベノワは、愛心社を父から継いだ後、経営が徐々に悪化している状況で、手紙を受け取ったという。その手紙は、ペットを国外に運ぶのを手伝えば大金が手に入るというもので、彼はこの犯罪に手を染めた。ベノワとピエールは手紙で連絡を取り合っていたため、直接会ったことはなかった。最後の手紙は、前日の夜に受け取ったもので、マレショーセ・ファントムから身を隠すという内容だった。ベノワが捕まっても、リネットには気がかりな点がいくつかあった。ピエールは偽造ロシの痕跡すら家に持ち帰っていないのに、なぜペンダントやバーニーという目につく手がかりを残したのか。ピエールは科学院から処分を受けて材料に近づけないのに、偽造ロシの原料をどうやって調達したのか。ピエールはバーニーのお腹に偽造ロシが無いことを知っているのに、なぜベノワに伝えなかったのか。これらの謎について旅人と共に考え、ピエールとベノワ以外に第三の人物がいると推理した。その人物は、二人を切り捨て、自分から疑いの目を逸らそうとした。旅人とリネットは、エロルディが出会った当初から様々な先入観を植え付けようとしていたことに気づいた。マレショーセ・ファントムがピエールに目を付けるように仕向けたのも彼女で、愛心社に注意が向くように運航記録を目立たせたのも彼女だった。そして、運航記録には職員であるエロルディ自身の情報が含まれていなかった。さらに、彼女は何かにつけてシフトを変更し、その時間帯は愛心社の活動時間帯とかなりの確率で一致していたという。彼女の本名はエロルディ・ルフェーブルで、ルフェーブル家のだった。彼女はルフェーブル家が権勢を失うより前に警察隊となり、ルフェーブル家の一掃に積極的に関わることで疑いが及ぶのを避けた。シュヴルーズとリネが助太刀に加わり、エロルディは制圧され、逮捕された。2. 「水の娘」とある小さな劇団の創設者であり団長のアレリー・フェイムは、居場所を失った人や、自らの志を実現できず鬱々としていた人々を説得し、劇団に招き入れた。そして自ら台本を書き、自ら出演し、団員一人ひとりを指導した。劇団の看板女優ドルフィーは生まれてすぐに奇病にかかってしまった。発作を起こすと全身の力が抜けてしまうというものだ。家族は治らないことに気づくと、彼女を捨てた。薬を買うために独りで働き、発作が起きると路地に何日も横たわり、物乞い同然のような生活を送っていた。アレリー団長は、ドルフィーと出会い、歌を習ってみないかと声をかけた。さらに、歌や演技を教えるだけでなく、薬を買い、病気のときは面倒も見てあげたという。ローウィックは殺人犯の子供で、幼い頃から親の世話を受けず、孤児院で育った。孤児院でいじめの標的となり、殴られることに耐えかねて逃げ出した。世の中にはクズしかいないと思っていたとき、アレリー団長と出会った。彼はその時から、解散するまでずっと劇団に残ると決意した。役者のポウルは、アレリー団長のことを好きになり、彼女に愛を告げた。ほぼ即答で拒絶されてしまったが、彼は、彼女が劇団のことで悩む必要がなくなること、劇団員全員が自分の居場所を見つけることを望んだ。このように、団員の多くは劇団を「家」だと考えていた。アレリー団長の未完の遺作となったミュージカル「水の娘」は、家族の忠告を無視して、自らを人間の姿に変えた幼いの物語だ。人のように暮らすことを渇望し、友情と愛情を順調に手に入れて、すべてが円満のように見えた。しかしある日、正体がばれたことで事態が急変する。「人として生きるというのは、秘密を隠し、苦痛を味わい、孤独とともに歩むこと。それでも君は、それを望むのかい?」これはシナリオの核心をついたセリフで、まさにアレリー団長の人生そのものだ。彼女は、劇団の苦悩の一面を団員に見せず、ただ純粋に演技を楽しませた。また、終始劇団と団員に心血を注ぎ、団員たちは皆、彼女を誇りに思った。しかし、あるとき、アレリー団長は連続少女失踪事件の被害者となり、水の娘は未完のまま命を落とした。アレリー団長がいなくなってからというもの、劇団は心の支えを失ったかのように、どんどん状況が悪化した。劇団は完全に混乱状態に陥り、創作も経営も、何一つ出来なかった。団員達は、素敵な思い出がバラバラになっていくのを指をくわえて見ているぐらいなら、潔く終止符を打とうと考えた。最後に未完の「水の娘」を完成させ、劇団のカーテンコールとすると同時に、アレリー団長への最後の贈り物にしようと決意した。しかし、公演日が迫るにつれて、ドルフィーの持病が悪化してしまった。ローウィックは、彼女は公演に参加できないと判断し、代役のボランティア探しを冒険者協会に依頼した。しかし、ギャラなしの出演に応じる者は誰も居なかった。旅人とパイモンは、からその話を聞き、水神を辞したを助っ人として提案した。フリーナは、舞台に立たないと決めていたため一度は断ったが、アレリー団長と団員のエピソードを聞いて、顧問として協力することにした。稽古に入ると、メインの二人の役者は姿をくらましている上に、水の娘の結末を決めかねていることが判明した。結末については、楽しい再会の日を迎える結末にすべきか、現実的な意味合いを含む悲劇にすべきか、団員の中で意見が割れていた。主人公の恋人役を演じるポウルは、暫定的な結末を作るために家に閉じこもっていたが、約束の日時を過ぎても連絡がないままだった。旅人達はポワソン町で物語の結末を検討していたポウルのもとに行き、考えている結末を聞いた。それは以下のようなものだ。幼い純水精霊は家族の忠告を無視し、人間になった。彼女は賑やかに栄える都市で、友情と愛情という収穫も得たが、予期せぬ出来事に見舞われた。住民たちは突然、周辺の淡水が消え、土地が乾き、植物が枯れていくことに気付いた。異常を察知した人々はパニックに陥った。水の娘「コリオ」は恋人とともに、責任を持って事件の真相を調査しに行った。その結果、人間の長年の浪費と汚染のせいで、淡水は意志を持つかのようにこの地から逃げ始めていることが分かった。コリオは純水精霊なので、水の考えを瞬時に読み取った。そして彼女は、自分の正体と事件の真相をすべて恋人に打ち明けた。恋人は彼女を受け入れ、淡水を元の場所に戻す方法を共に探そうとした。しかし同時に、それを盗み聞きしていた者がいた。水の娘は淡水を奪った罪人と見なされジレンマに陥る。最後に、水の娘は身を挺して、自らを犠牲に彼女の恋人と全人類を救ったのだった…。ドルフィーはこのストーリーを聞いて反対意見を持った。彼女の意見はこうだ。水の娘の主人公はアレリー団長を象徴するものであり、彼女は最後まで、英雄になれなかった。水の娘は憎しみによって死に至り、彼女を深く愛した者は真実を解き明かすことをやめ、人類は滅亡する…。これを聞いたポウルは、心から愛していた団長は、せめて台本の中では最高の結末を迎えるべきだと主張し、二人の意見は平行線だった。妥協点を探すため、ポウルとの意見の相違が最も大きかったヴィルマントに会いに行くことにした。重要な悪役を演じるヴィルマントは、団長の失踪以来、一度もフォンテーヌ廷に戻っていなかった。ヴィルマントは、アレリー団長の死のきっかけを作った人物でもある。団長の存命中、彼は劇団の財政状況を懸念していた。そんなある日、公演後に商人から連絡があった。それは、公演時に彼らのドリンクを提供すれば、代わりにスポンサーになってくれるというものだった。ヴィルマントは互いに利があると判断し、アレリー団長に無断で引き受けた。ところが、商人から届いたドリンクはロシであった。彼はアレリー団長に相談し、取引中止のための交渉に向かった。約束を反故にされた商人は、劇団に多額の賠償金を請求してきたが、当然払えるはずもなかった。そしてある日、アレリー団長は団員たちに先に帰るように急かした。その日以降、アレリー団長は失踪し、連続少女失踪事件の被害者となった。ヴィルマントは旅人達にアレリー団長の死の真相を語った。ポウルは激怒し、言い争いになったところにフリーナが仲裁に入り、こう主張した。団長は、弟や妹たちに暖かい家庭を作り、荒波から守ろうと努力していた。それこそが真に記念すべきことで、どうしようもない対立があるのであれば、最後の公演はやるべきではない。そうしないのは、団長と団長が築いた「家」を捨てられないからだ…。これを聞いて、ヴィルマントとポウルは我に返った。物語の結末については、団長に再び焦点を戻し、彼女の本当の気持ちを物語の結末にすることにした。彼女の最期を知るために、パレ・メルモニアへ遺留品を確認しに行くことにした。ヴァシェの手にかかった少女たちの遺留品の中に、アレリー団長が最後に残したノートがあった。ノートには、人が溶けるところを目の当たりにし、静かに死を待つ恐怖が綴られていた。同時に、例えこのような状況下にあっても、団員たちの「姉」として、後悔はなかったことが読み取れた。また持って行かれた。六人目。七人目かもしれない。昨日は逃げようとした人が捕まって戻ってきたけど、もう見かけない。昨日ではなかったかもしれない、とっくに時間も日付も曖昧で。こう書いたところで役に立つのか分からない。でもまだしばらくは書ける。自分の遠くない将来の運命はもう分かるけど、それより怖いのは…ここで劇団の他の人に会うこと。私は本当に彼らを守っているのかしら?本当に申し訳ないけど、もう書き続けられない…熱が出ているようで、胃病も再発している、でも薬がもらえない。痛みで一晩眠れなかったクリッシーに比べればたいしたことはないけど。実験品の価値…死ぬ前に使い切りさえすれば大丈夫ね。湿気がひどいので、毛布を彼女に与えた。寒い、寒い、本当に寒い。粘り続けていれば、すべては過ぎ去る。努力は最後には報われる。彼らにこんな話をするのが大好き。でも粘り続けることができないのは自分。誰か…見かけたら…劇団…無事…一番…大事な…お願い…お別れを…ごめん…生活…公演…未来…残念…コリオ…人として生きるというのは…秘密を隠し、苦痛を味わい、孤独とともに歩むこと。それでも君は、それを望むのかい?私は、あの子たちのお姉ちゃんだから。みんなを愛してる。旅人達は団員にこのノートの内容を伝えた。ある者は沈黙し、ある者は泣きすさび、またある者は怒りに吠えた。その後、団員達は冷静さを取り戻してから、長い時間をかけて結末を決定した。フリーナの計らいで、最後の公演をエピクレシス歌劇場で演じることになった。しかし、公演の途中でドルフィーの病状が悪化してしまった。ドルフィーは、最後のシーンとなる歌を、フリーナに歌ってほしいと伝えた。フリーナは舞台に立たないという原則を破ることになるが、後悔したくないと語り、歌うことを決意した。Ah, si je pouvais vivre dans l'eau,ああ 水に還れたらle monde serait-il plus beau ?世界は色づくの?Nous pardonneras-tu, ô chère mère ?我らに慈悲を 親愛なる母よ《chère Mère》L'eau dans son courant fait danser nos vies.生命(いのち)のせ 水は躍るEt la cité, elle nourrit.街に息吹をAinsi que toi, mon doux amour.あなたに慈雨(めぐみ)を——Non, le grand amour ne suffit pas.ああ この愛もかなわずSeul un adieu fleurira.別れの花咲かすC'est notre histoire de vie, douce et amère.甘く苦い人生《物語》Moi, je suis et serai toujours là,いつまでも 見守ろうà voir le monde et sa beauté.この美しい世界Et ça ne changera jamais, jamais...これからも永遠(とわ)に…フリーナが演じたヒロインのコリオは、人間が生きるために必要な淡水を取り戻すために自らを犠牲にすることを決め、その意志によって水を元の流れに導き戻した。台本の筋書きによれば、彼女は消失する直前に空から降ってくるを手に入れるはずだったが、それに手を伸ばさず神の目の意に任せて孤独に海底に落ちていく。しかし公演の本番中、なんとフリーナの前に本物の神の目が出現した。神の目とは人間たちの最も強い願いに応える形で現れるものだが、この神の目は彼女の過去に対する称賛のようなものであった。フリーナは神の目を手にした。そこから発せられる輝きはまるで、今回の公演によって再び満たされた自分の心のようであった。歌い終えた彼女は「結構、楽しかったけど。」と独白した。公演は成功を収めたが、団員達は劇団を解散させることを選んだ。フリーナは公演を終えて、舞台に戻るのもそれほど嫌ではないと感じた。他人を演じたくはないが、自分を表現することが新たな舞台だという。僕はかつて、仮面を被った役者で…でもそれは、真実を隠したいだけだった…これからは、人と人の間にあるリアルな物語をもっと感じたいと思う。彼らがどのように咲き、どのように枯れ…そしてどんな物語を紡ぎ、永遠に謳われるのか。3. 怪盗マーテン十数年前、「マーテン」を名乗る盗賊がフォンテーヌ廷で活動していた。その正体を知る者はなく、警察隊ですら、しっぽを掴むことはできなかったという。彼は悪名を轟かせており、他人が大切にしているものばかり狙って動くため、誰もが標的になる恐れがあった。大商人が金庫に隠した高価なネックレスだけでなく、一般人の子供が誕生日にもらった人形にまで手を出したそうだ。十年前のある事故がなければ、怪盗マーテンは今も裁きを逃れていただろう。セサルという魔術師が高所からの脱出マジックを披露している最中に、事故で転落死した。警察隊が遺品を整理したところ、彼の家からは大量の盗品や犯行道具が見つかった。この事故が、怪盗マーテンの正体が露わになったきっかけとなった。しかし、セサルを知る者の中には、「まさか」と考える者もいた。セサルは街で子供たちにバルーンを配るようなお人好しだったのだ。マジックショーを終える度に、子供たちにプレゼントをあげた。子供たちに願いを書いてもらって、次のマジックで「願いごとリスト」にあるものを出してプレゼントすることもあった。セサルが事故死してからは、願い事を集める理由は「一番大切にしているものを盗むための情報収集だ」と言う者も出てきた。セサルの死と同時に窃盗事件の数も一気に減った。しかし、十年後になって、怪盗マーテンが再び予告状を堂々と歌劇場の扉に貼り出した。「三日後の夜、歌劇場へ君の最も大切なものをいただきに来よう。十年前、君がしてくれたように。」は、三日後に歌劇場でマジックショーを開催する予定だったため、ショーの前に怪盗マーテンの正体を暴こうとした。リネは旅人とパイモンを「臨時魔術アシスタント」として雇い、一緒に調査することになった。リネは、最も重要なのはセサルについてはっきりさせることだと語った。もしセサルが怪盗マーテンなら、彼は既に死んでいるため、今回はただの模倣犯だ。逆に、セサルが怪盗マーテンでない場合、本当の怪盗マーテンは十年間ずっと消息を絶ち、隠れていたことになる。まずは、毎週セサルの墓参りをしているという、婚約者のジェマから話を聞くことにした。彼女は、よく墓の前で独り言を言い、最近の出来事をセサルに教えているという。ジェマを知る者は、彼女がこれほど献身する相手として、卑劣な怪盗のセサルは相応しくないと考えた。リネ達がジェマを待ち構えていると、彼女は怪我をした状態で現れた。彼女から話を聞こうとしたが、質問の答えをはぐらかして、帰るように警告した。リネ達は、彼女の不自然な表情に怪訝を抱きながらその場を離れた。翌日リネ達は、セサルの弟子でアシスタントのロレンツォを調査した。セサルが生前少しずつ蓄えていたマジックの秘密は、全てロレンツォが継承した。ロレンツォはセサルを超えるほどの大マジシャンに出世して、モラもたくさん稼いだ。今は既にマジックの業界から退いて、大商人として様々な事業を手掛けている。ロレンツォは、セサルが怪盗マーテンでとっくに死んでおり、予告状はただの悪戯だと主張した。「根掘り葉掘り探ること——それはマジックにおいて、最もやってはいけないことだ。無駄な好奇心は抑えたほうが身のためだぞ。」有用な情報は得られなかったが、何かを隠そうとしていることが見て取れた。ロレンツォから離れると、リネは誰かから尾行されていることに気づき、戦いになった。彼らを打ち負かすと、捨て台詞としてジェマを脅していたことを仄めかした。リネ達は再びジェマに会いに行き、危険はなくなったことを伝え、怪盗マーテンの正体を必ず暴くと約束した。ジェマはリネを信じ、サーンドル河のマジック工房の場所を伝えた。工房に辿り着くと、そこは様々な仕掛けと謎解きに守られていた。隠し部屋に入ると、セサルの日記があり、二人の子供について書かれていた。その子供達はセサルにマジックを教えてほしいとねだったという。セサルは、二人の純粋な瞳にじっと見つめられ、承諾するほかなかった。二人は才能に恵まれており、斬新なアイデアを既にたくさん持っていたため、セサルは自分よりもずっと偉大な魔術師になれるはずだと考えた。その後、二人にツアーに同行しないかと尋ねたが、断られてしまった。ある日、彼は二人が「お父様」と「任務」の話をしていたのを偶然耳にした。彼はツアーへ発つ直前、 色々考えた末に、とある考えを二人に伝えた。「この世界は元から嘘と偽りに満ちている。だから私たちはその中から自分なりの真実を見つけることを学ばねばならないのだ。」調査を進めると、工房の中には「高所脱出マジック」用のマジックボックスが置いてあった。高所脱出マジックは、まず観客に注目されながらマジックボックスに入る。宙に吊られたマジックボックスは揺れ——しばらくすると、ボックスの底面が自動的に開く。そこで、マジックボックスからはダミーの人形が落ちてくる。観客はそれがダミーだと知る術がないため、落ちる人形に注意を引かれ、思わず悲鳴をあげてしまう。いつの間にか人混みに紛れ込んでいた魔術師本人がタイミングを見計らって登場し、大袈裟に怯えたフリをして見せる。「神よ!私はどうしてあそこにいるのだ?もしや、私はもう死んでしまったのか?」観客たちの目線は自ずと魔術師に注がれる。気付けば地面にあるダミーは既に消え、見たばかりのはずの出来事は、まるでただの幻のように感じられる。しかし、マジックを発明した本人のセサルは、これを完遂することなく死んでしまった。マジックボックスが開いたとき、落ちてきたのはダミーではなく、彼自身だった。神の目を持たないただの一般人の彼は、歌劇場の屋根の上から地面に落ち、命を落としたのだった。セサルは、自身で専用のマジックボックスを作っていた。この箱の中には魔術師自身にしか分からない仕掛けがある。魔術師がボックスに入ると、ボックスは宙に吊られているため、観客は限定的な範囲しか見えない。観客たちは箱の正面、側面、底面しか見えず、背面と蓋の部分が完全に盲点となる。箱の中で、魔術師が内部のボタンを押すと、観客からは見えない箱の後ろにある隠し扉が開く。 魔術師はチャンスを見つけて隠し扉から脱出し、屋根の上に戻ってから、観客たちがダミーに注目している間にこっそり地面へ降りる。このマジックにおいて、一番難しいのは、観客たちの感情をコントロールすることだ。長く研鑽と訓練を重ね、無数の努力をたった数分間のショーに集結させる。「予想外」をサプライズに変えて、観客を笑顔にするのだ。セサルが事故に遭った時に使ったマジックボックスの中には、ギミックのボタンは右側に設置されていた。実際、人々の前でも、セサルはいつも右利きとして振舞っていたようだった。しかし、工房の中では、大多数のマジック道具のギミックは左側に仕組まれていた。リネは、セサルは本当は左利きだと推理した。魔術師たる者、目立つ習慣を持ってはいけない。一般人は、自然にその最も重要な部分に目線を向けてしまう。必要以上の注目を避けるため、魔術師は逆にあえて自分の視線を制御する必要がある。マジックの真髄は虚実の入れ替えであるため、「真」の部分を警戒されてしまったら、「虚」の部分も隠しようがない。このような理由から、セサルは右利きのふりをした。それでも、焦ったり、緊張したり、周りに人がいない場合は左手を使ってしまうため、ギミックを操作するボタンを左側に設置した。脱出マジックの時間制限はかなり厳しい。セサルは僅か数秒間の間にボックスの隠し収納を開け、観客の注目を引くためのダミーを出してから、隠し扉を開けて素早く逃げる必要がある。しかし、高所脱出マジックの本番では、隠し扉を開けるボタンが左側ではなく右側にあった。誰かがマジックボックスを偽物に入れ替えたのだ。無意識に左手は、あるはずだった脱出用のボタンを探り続けてしまう。すると、箱の底が自動的に開いてしまった。セサルの本当の利き手を知り、かつ無理なくマジック道具を入れ替えることは、彼と親しい人間にしかできない——その犯人は、弟子のロレンツォだった。ジェマを脅し、リネ達を襲ったのは彼の仲間だった。ロレンツォがまだセサルの弟子だった頃、セサルはマジックを使って金をだまし取ることを厳しく禁止されていた。セサルは路上でのショーに没頭し、「巡回公演」をして、金儲けのことは一切考えていなかった。他のマジシャンの弟子は師匠に師事すれば贅沢な生活ができるが、ロレンツォだけは違っていた。技術は山ほど身につけてきたのに、普通の生活しかできなかった。ロレンツォは、セサルが死なない限り、才能を発揮できないと悟った。そして、殺すことを決意した。加えて、ロレンツォは自身が怪盗マーテンであると自白した。警察隊に彼を引き渡したが、リネは事件の真相にまだ疑問を持ったままだった。翌日、予定通り歌劇場でリネのパフォーマンスが開催された。リネットは、ジェマと公演を観ながら、彼女こそ本当の怪盗マーテンだと指摘した。彼女は幼くして両親を亡くし、一人で流浪した。欺かれ、笑われ、殴られ、ゴミ箱で紙くずを漁り、拾った木の枝で汚い絵を描いて、あちこちから集めてきたぼろきれを使って、醜く拙いぬいぐるみを縫いあげた。彼女の人生は抜け出せない沼のようだった。幸せであるべき年頃に、彼女は隅っこで、指をくわえてこの世界を眺めることしかできなかった。苦しみの中、彼女は幸せな人を全員憎むようになった。十数年前、怪盗マーテンが有名になるにつれ、警察も彼女への警戒を高めていった。彼女は大人しく捕まる気などなく、すぐに行方をくらます策を思いついた。偽物の怪盗マーテンを作り上げて、人々を欺く方法だ。こうして、ジェマは有名な魔術師セサルに狙いをつけた。ジェマはうまくセサルを騙して信頼を得ると同時に、彼に不満を抱く弟子ロレンツォに気づいた。ロレンツォはジェマに誘導され、セサルのマジックボックスに細工し、落下事故を引き起こした。その後、ロレンツォは師匠のマジックに関する遺産を己のものにし、怪盗マーテンはその汚名をすべてセサルに着せた。それから十数年が経ち、ジェマとロレンツォは、セサルを殺害した共犯者でもあり、傷口をなめ合う友人となった。そして、ジェマにとって、ロレンツォは今後二度と訪れない「真実」となっていた。リネット:これであなたは「自由」よ。ジェマさん、おめでとう。リネット:自由の代償に、嘘と偽りだけの世界で孤独に生き続けるといい。我慢できるといいね?人生はまだまだ長いんだからさ。リネは、歌劇場でセサルを偲んで高所脱出マジックを成功させた。その翌日、ジェマは自分こそ真の怪盗マーテンだと警察隊に自首した。彼女は警察隊にこう伝えた——「最後の願いは、もう一度ロレンツォに会うことよ」
メディア
インフォメーション
出典: HoYoWiki (HoYoverse)